君のなかへ、幾千の夏をこえて

山本夢子

1 自殺管理法の成立




 令和18年8月、自殺管理法の成立。




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  【自殺管理法】


   十八歳以上の成人は、

   自殺を希望するとき、

   政府の管理施設で、自殺することができる。



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 日本社会は──

 死にたければ、

 安らかに死ねるシステムをつくった。


 施設のベッドの上で、腕を差しだせば、

 点滴のように、即死薬が血管に注入される。

 そして、眠るように死ぬことができる。





 自殺管理法が成立した頃、

 ぼくは、高校三年生だった。


 恋に破れて、

 生きることに、疑念を感じていた。











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