ようこそ個性豊かな最強美少女スライムが住まう喫茶店へ~勇者パーティーを追放されたエンシェンターの俺がテイムしたスライムが急成長し美少女に。彼女達と共に喫茶店を営みながらスローライフを送りたい~

水瓶シロン

第01話 どうやら俺は用済みらしい

「アラン、お前はもうこのパーティーに必要ない。追放だ」


 パーティーリーダーであるダリスからそんなことを言われたのは、これから次の街へ向かおうとしていたときだった。


 荷支度を済ませ、この街の出入り口の一つである北門の手前に差し掛かった辺りだ。


「えっ……?」


 思わず俺の口から間抜けな声が零れ出るが、至って自然な反応だろう。


 一瞬聞き間違いかと思って他のメンバーの表情を窺ってみるが、皆顔を背けたり視線を伏せたり、気まずそうな表情をしていたり……。


 どうやら、聞き間違いではないらしい。


 一年前だ。初めはたまたま同じ街で知り合った駆け出し冒険者が集まってできただけのパーティーだった。


 それが、今やこのパーティーは勇者パーティーの一つに数えられるほどに成長した。


将来世界に災いをもたらす存在――魔王を討伐しうる可能性のあるパーティーを世間は『勇者パーティー』と呼ぶ。


 今世界中の勇者パーティーを全て数えても両手の指が埋まるかわからない。


 そんな一握りの存在にまで、このパーティーは結成からたった一年で成り上がった。


 俺はそんなパーティーの最古参として、一翼を担ってきた。


 支援魔法で味方にバフを掛けたり、敵にデバフを与えたりする『エンシェンター』――それが俺の役職だ。そしてその役職に恥じない働きを、今日このときまでしてきたつもりだ。


 戸惑い、頭が真っ白になる俺に、ダリスは肩を竦めて言う。


「ハッキリ言う。お前の支援魔法はもう必要ない。良いか? 俺達は一人一人が一騎当千の強さを持ってんだ。お前の支援がなくても、充分以上に戦える。それどころか――」


 何となく、次にくる言葉がわかってしまった。


「――一人で戦えないお前が抜ければ、俺らはもっと自由に戦える」


「……」


 ……だろう、な。


 俺はその言葉に納得してしまった。いや、薄々自分でも気が付いていた。


 俺はエンシェンター。前線に立って戦うことが仕事じゃない。後方で味方を支援するのが役目。


 だが、味方を支援する必要がなくなればどうだろう?


 用なしだ。

 それどころか、自分一人で戦えないエンシェンターは、どうしても自分の身を仲間に守ってもらわなくてはいけない。


 結論、役目を失ったエンシェンターは、ただのお荷物。足枷だ。


「これから先、俺達の旅はどんどん過酷になっていく。お前に足を引っ張られてたら、俺達が死んじまうんだよ!」


「……そうだな」


 そんなこと言われたら、頷くしかないだろ。


 正直言われてることは真っ当だし、一理ある。


 だが、本当に俺は足枷だったか?

 いくら前線組が強くなったとはいえ、俺の支援で効率よく戦えていなかったのか?


 解雇なんて、酷すぎないか?


 でも……こんなに酷いことを言われても受け入れてしまう自分がいるのは、自分のせいでパーティーメンバーが死ぬのは嫌だから、なのだろう。


 誰もダリスの言うことに反論しないということは、俺の追放がパーティーの総意。


 俺はこのパーティーの最古参。誰よりもこのパーティーが大切だ。


 だからこそ、皆が俺のことを足手纏いだと言うのなら、俺は追放を受け入れるしかないのだ。


 ダリスはもう言うことはないとばかりに鼻を鳴らすと、俺に肩をぶつけて通り過ぎていった。


 そんなダリスのあとに続くように、他のメンバーも俺と一度も目を合わせることなく、俺の横を通り過ぎていく。


 俺は振り返った。


 北門を出ていくパーティーメンバー。いや、元パーティーメンバー。


 そんな彼らの背中を見詰め、見送りながら、俺は思ってしまった。


 出来ることなら、旅路の果てまで一緒にいさせて欲しかった――と。


 しかし、そんな浮かんだ思いを俺は自嘲気味に笑って振り払う。


「……わがまま、か」


 俺は一人、街へと戻っていった。

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