はみ出さないようにしていた『普通』の枠を、いつかぶち壊せる日まで

『呪い』と聞いて、どんなイメージを持つでしょうか。魔女とか呪術師とか、そういう特殊な人が使う不思議な力?
否。
本作に出てくる『呪い』は、誰もがかかり得るものです。

親からの抑圧によって『普通』でいることを強いられた主人公・直子。
周りから浮かないよう細心の注意で『普通』を選び続けていた彼女の運命は、クラスのいじられキャラ・鷹守との関わりができたことで、風向きを変えていきます。

直子ちゃんの『普通』でありたいという感覚、分かる人も多いのではないでしょうか。
はみ出していない状態は、ある種の安心感をもたらします。まるで安全地帯のようだから。

他人に迷惑をかけない。祖母から母、母から娘へと連綿と受け継がれていく『呪い』は、自分の個性を押し殺すようにとじりじり心を蝕んでいきます。

鷹守くんの寄り添う姿勢が素晴らしく、何度も優しい気持ちにさせられました。
ただのいじられキャラではなかった。常に毅然として揺るがない彼は、見た目は可愛い子チワワ男子でも、とても頼りになるいい男でした。

一つ一つの展開が丁寧で、心理や思考の動きに説得力があります。
胃がキリキリするような場面も多くありましたが、それゆえに清々しいラストシーンは胸に来ました。
『普通』とは何をさすのか。誰にとっての『普通』なのか。
直子ちゃんが辿り着き、選んだ答えは。
ぜひ見届けてください!