第004話「秘密基地 ②」

「ボクたちはゾンビ化から【蘇生】する時に……何かしらの暗示……または枷ともいうべき【禁止事項】を脳に刻み込まれるようなんです」 

 

 それは何者かの意図があるとしか思えないことだった。

ゾンビ化からの【蘇生】、そのことによって行動に制限がかかるのだ。

 蘇生者の特徴としては、


 ・身体の欠損は蘇生時に回復する。欠損が四割を超えると回復は難しい

 ・身体的には普通の人間と変わらないがゾンビに対する敵対行動ができなくなる

 ・夜間は動きが鈍る


「ボクたちはゾンビに対してあらゆる攻撃行動ができなくなります」


 それは何度かの実験を行うことで明らかになった。ゾンビ化した者は【蘇生者】を襲わない。しかし、逆もまた不可能だった。

 例えば、吉田の開発した【三渓の湯】の入った特殊な弾でゾンビを攻撃しようとしても身体の硬直、痙攣、嘔吐などの症状が現れ実行できなくなる。近づくことすら困難だった。

 遠隔操作の攻撃も不可能だった。


「それじゃあ、オレたちはどうすればいいんですか」


「ですので、ボクたちの運命は彼女たちに託されることになったんです」


「彼女たち?」


 聞き返す彼の前に三人の少女が姿を見せた。


「玄兄ちゃん。よかった。無事に【蘇生】できたんですね!」


 嬉しそうに駆け寄ってくる一人の少女。それは今年高校一年生になったばかりの近所の女の子だった。


「真弓ちゃん?」


 久しぶりにあった気がする。彼女が小さい頃はよく一緒に遊び相手をしていたものだ。親同士が友人同士ということもあり、当時高校生だった玄太郎は彼女が生まれた頃からよく面倒を見ていた。

 久しぶりに見る彼女は見違えるほどに美少女になっていた。玄太郎はロリコンではないが、思わず見惚れてしまうほど真弓は輝いて見えた。


「右から、真弓さん、銃夢さん、刀子さん。あなたを救ってくれたのは彼女たちです」


「まあ、主に活躍したのは真弓さんですけどね」


「ちょっと、あたしだって活躍したんだけど!」


 銃夢がぷくっと頬を膨らませる。


「と、刀子も……頑張ったよ」


 刀子はもじもじとしながらも自己アピールを忘れない。  


「そうだったんだ。君たちのおかげで助かった。ありがとう」


 玄太郎が素直にお礼を言うと真弓は照れたように頬を赤らめた。


「いえ……当然のことをしただけです」


「でも、どうして真弓ちゃんたちなんです?」


 素朴な疑問だった。彼女たちにできるのであれば他の者にもできるのではないか。


「他の人たちでは無理です。先ほども言いましたが【蘇生者】はゾンビを攻撃することはできません」


「と、いうことは……」


 玄太郎は真弓たちを見た。


「そうです。彼女たちは恐らく世界で唯一の【ゾンビに襲われていない人間】なんです」

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