第13話 子どもなんです

―火曜日― 


今日、保護者面談があり、4限目に終わることとなっている。


だから、6年生たちは早く帰れることに喜んでいたが、俺は、今日の放課後みさきに何を言われるのか、そのことを考えていた。


あの仲の良い2人がけんかする理由。


1つ教えられたことは、俺が原因だ。


だが、美咲とけんかする理由にはならない。なんなんだ。


答えを探しても見つからない。


そして、歩をあそこまで追い詰めたのは何が原因だ。


近くにいながら何もわからない。


俺は、そんなことを考えている間に下駄箱につき自分に落ち着けと念じていた。


今日、歩に会ったら、“あゆみ“と名前で呼ぼう。


どれだけ怪しくてもそれが今の俺にできるたった一つのことだから。







俺は、クラスに入り、自分の席に着き歩が来るのを待った。

だが、来なかった。


先生「今日、歩は、体調が悪くて休みだそうだ はい、では1限目の用意をするように」


俺と美咲は席は遠かったが、お互い顔を見合わせた。



そうだ、あの様子で来ると思っていた俺たちが間違っていた。



今日は休む、その方が歩にとって絶対いいことだ。


美咲が廊下に出る。それを見て俺も向かった。


隆之「俺たち自分の都合いいように考えてたんだな」


美咲「......そうだね 反省しなきゃ…」


隆之「...今日は、早めに帰れるから昨日の話十分聞けるだろ?」


美咲「うん...そうだね」


隆之「... じゃあ、教室に戻るわ」


美咲「...うん」 俺たちはそうして部屋に戻り、授業を受けた。




―休み時間―


4限目前の休み時間に部屋メンで廊下の隅に行き、樹の話を聞くこととなった。


部屋メン①「いつき、あゆみ休んだけどなんかあったのか?」


樹「分からない…」


部屋メン②「まだ、返事ももらってねぇんだろ?」


樹「...ぅん でも、考える時間も必要だと思うし」


部屋メン③「いや、ここは強気に出た方がいいよ」


部屋メン①「そうそう、このままうやむやになんぞ」


樹「... 正直どうしたらいいのかわかんないんだ たかゆきどう思う?」


俺に名指しされた。



ここで俺が怒って、答えを押し付けるのはダメだ。だから、



隆之「...今は、そっとしてあげなよ だから、休んだわけだし」


樹「.....そうだ な やっぱ頼りになるな、たかゆきは」


隆之「.....」


部屋メン③「てか、あゆみとたかゆきって仲いいよな 昨日の体育でもそうだったけど」俺は、心の中でやめろって思ったが、すでに遅かった。


樹「……」


隆之「…」


部屋メン②「おい、今それはやめとけよ ..たかゆき何も知らないよな?」



隆之「あぁ、知らない 何も知らない 分からないことだらけだ ただ、分かることはある、あいつは相当危ない状態にあるそれだけだ だから、変な考えはするなよ」俺は、淡々とその言葉を述べた。


樹「…」


部屋メン③「ごめん」


部屋メン②「俺もごめん」


隆之「いや、俺も言い過ぎた わるい」


樹「ごめん みんな俺のためにこんなことになっちゃて この話はやめだ そろそろ授業だし戻るか」そう言って、部屋メンは、戻っていった。


俺もその後を追った。


そして、授業が終わり、掃除をし、帰りの会を済ませ、集団下校した。



―下校(前編)―


そして、俺たちは昨日と同じように他の人を先に行かせ、一緒に通学路を歩いた。


美咲「...よし!切り替える!」


隆之「..そうだな みさき、昨日の続きを聞かせてくれ」


美咲「うん まず、昨日も行ったけど あゆみの名前をたかゆきが言わないことを私は、相談されたてた 修学旅行も前から」


隆之「...そうか 続けてくれ」そんなにも前から..


美咲「で、ここからが大事なこと その名前を言ってくれないことにあゆみ自身、自分は嫌われてるかもしれないって思ってたんだ 私は、必死にそうじゃないよって伝え続けたけど あゆみにはそれが大きな問題で悩んでいたみたい」


隆之「…」


美咲「そして、私たちがけんかした最大の理由は、友達である私がたかゆきとベタベタしているのが嫌だったみたい そのことと名前を呼ばないことが合わさってあゆみは、USNの昼食の時爆発しちゃったみたい だから、わたしのせいなの!」


隆之「...ちがうよ」


美咲「えっ!?」


隆之「俺がそんな相談をさせてたことが悪かった 

   いや、違うな 誰も悪くない 

   結局周りのことを誰も見れていない 

   みんな自分を優先しているってだけだ 

   それに善悪もない 他人を優先するのが良いことだと俺は思わない 

   周りが、ただあれは、良い悪いの評価を勝手につけるだけ 

   だから、本人は悪くねぇ ただ、俺たちは誰かと暮らしているんだ 

   なら、覚悟を持つしかない 俺たちはその覚悟が足りてなかったんだ」


美咲「...そんな覚悟なんてもてないよ」


隆之「俺たちは子どもだぜ そんなもの必要ない ...だから、あゆみはあぁ言ったんだな」


美咲「...えっ?」


隆之「あゆみと話しているときにさ、答えが出ない だから、今の気分を大切にすることにしたって それってさ、けんかなんてしたくなかったけど答えが出ないからその時の気分に従ったってことだろ?」


美咲「…」


隆之「俺たち子どもが考えれることなんて大人からすれば大したことない だから、答えが出ない でも、どうにか今を変えたいなら本音で話すしかないってそう思ったんだろ」


美咲「...っ..」


声を抑えながら美咲は泣いていた。


いつも行動に品がある美咲からこんなにも涙をこらえて泣いているのは想像できなかった。



そして、美咲は俺の肩をつかんで泣いて、さらに泣いた。



じっと俺は待つこととした。





美咲「..... ... 」美咲は泣き止み、ハンカチで涙を拭いた。


そして、俺の方を向いて


美咲「...ありがと..」


隆之「いや、大したことしてないよ てか、鼻水出てんぞ(笑)」


美咲「!?」美咲はすぐさにハンカチで鼻を隠した。


美咲「...女子にそういうこと言うとか...さ..いてい(笑)」


隆之「そのままでよかったってことか?(笑) まぁ、お互い様だ(笑)」


美咲「バカ.. でも、ありがと」



―下校(後編)―

隆之「何が原因だったかは分かった。 俺がすべて関係してることも」


美咲「.. それとけんかの原因ではないんだけど 相談というか心配になっていることがあって」


隆之「心配?」


美咲「うん 実はそのいつきって結構女子からは人気あるんだよね たかゆきと真逆で」


隆之「みさきさん 最後のいりました?」


美咲「でね、いつきとあゆみが仲良さそうに修学旅行中してたから女子の一部からちょっとした嫌味を言われてたんだ あゆみは」


隆之「それに俺は間接的に加担したんだな... ...だから、みさきは、それでいいの?って言ったんだな」


美咲「まぁ、違うけど それも入ってるかな」


隆之「..だとすると、それもあゆみを苦しめてる原因になってたわけか」


美咲「うん、それといつきの告白だね」


隆之「...みさきはその告白の返事を言わないのをどう見てる?」


美咲「うーん、私は、今の楽しい関係を終わらしたくないっていうのが本音だろうね 修学旅行中に答えを出さなかったのは色々起こりすぎてパンクしてたからだと思う」


隆之「パンクか そんな感じがするな」


美咲「あゆみは、いろんなことを抱えていたんだよ 小学生が抱えきれるはずがないよね」


隆之「…」


美咲「今までのを整理すると あゆみが危ない状態になった原因は、私とのけんか いつきからの告白 女子からの嫌味と目線 大きく3つだね もしかしたらそれ以外にもあるかもしれないけど…」


隆之「俺だったら、耐えきれないな…」


美咲「私も... それなのに」


隆之「あゆみは、あんなに明るく振舞おうとしてたのか...くそっ..」電柱にこぶしをぶつける。


美咲「...もう家の近くまでついっちゃたね ...明日 あゆみの家に行きたいと思っている」


隆之「...あゆみの家に!?」


美咲「そうだよ 明日も保護者面談2日目だから 4限目で終わる だから、時間はある」


隆之「... ぉ俺も行ってもいいか?」


美咲「そのつもりだよ 行きたくないって言っても耳引っ張りながら連れていくつもりだった」


隆之「なんだよそれ(笑) じゃあ、また明日な」


美咲「うん じゃあね」そうして手を振り、帰宅した。

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