第55話 怨霊6
「徹、このクロモヤの本体は俺の父のようなものだ。」
バレットさんは意味の分からないことを言った。
「つまり、よく分からないですけど。強いってことですか?」
「つまり、そういうことだ。」
「父親のようなものなら、説得とかそういうのは、」
まあ、この様子だと無理だったのだろうが。
「無理だ、息を合わせて戦うぞ。」
バレットさんがそういうので
「では、僕に合わせてくださいね。」
そうつぶやき、剣を構えた。
確かにクロモヤの本体の顔は、バレットさんと似ていた。それと、隙も見えなかった。とりあえずこの人を止めて、そして同級生のお墓に手を合わせに行こう。
『弱者が二人集まったところで何が出来る。』
クロモヤの本体はそうつぶやいた。そして剣を振るった。てか喋れる感じなんですね。
気が付けば斬られていた。いや、僕に攻撃は通じないが、斬撃を身に受けていた。
バレットさんは剣で斬撃を受け止めていた。なるほど、これは強いな。てかどういう仕組みで斬撃って飛ぶんだよ。意味が分からない。
『おかしい、俺はそこの人間を斬ったつもりだったが。』
クロモヤの本体は、そう言って首を傾げていた。
次の瞬間に僕の目の前にクロモヤの本体はいた。普段は痛みを受けたくないから、防御をしたりするが、絶対に防御など間に合わないので防御を捨てることにした。本来はしなくて良いものだし、痛みは感じるが、まあ仕方ない。僕は横に剣で斬られて、もちろん傷はないが痛みはある、死ぬほどいたいが、唇を噛みしめながらクロモヤの本体の首元に剣を振るった。さっきの攻撃で死ぬ気で攻撃しても大したダメージにならないことは分かっている。
『なるほど、人間。貴様は弱者ではないようだ。不死か何かだな。』
首元に当たった刃は全く傷をつけることは出来なかったでも。
「あなたが父であろうがなかろうが、ここで止める。」
バレットさんがいる、僕よりも多分、剣術は上手いし、攻撃力も高い。
『攻撃を始めるのが遅い。』
クロモヤの本体は瞬時に僕を蹴飛ばして、その後、振り返り、バレットさんの剣を受け止めると力任せにバレットさんも吹き飛ばした。
化け物かよ。でも、僕の攻撃は身で受けたが、バレットさんの攻撃は剣で受け止めた。つまり、バレットさんの攻撃でダメージを与えることが出来るってことだ。つまり、僕が出来ることは、バレットさんの攻撃を当てるサポートと。僕が盾役でこのクロモヤの本体の動きを縛って隙を作る。立ち上がり僕は、クロモヤの本体に距離を詰めた。
『まずは、厄介な貴様からだ。不死は厄介だが、身体能力は大したことがない。』
僕が動いている瞬間にも当たり前だが、相手は動いていて、目の前にクロモヤの本体はいた。まずい、直感で分かった。それで一歩後ろに下がった。もう遅かった。両足が黒色のモヤで囲われており、動きを封じられた。何故か、クロモヤの本体は悠長に構えていた。まるで攻撃する隙をバレットさんに与えているようだった。
「俺は、」
バレットさんは叫びながら、クロモヤの本体に向かって剣を振るった。振るった剣は、クロモヤの本体を切り裂いた。クロモヤの本体は、バレットさんの父親は笑っているように見えた。
『バレット、自分に自信を持て、それと俺は操られ………』
そうバレットさん父親が切られた状態でそうつぶやいた。そしてそこに周囲からクロモヤが集まっていった。
「…………父、俺は、あなたを超える、聖剣を超えるような人物になって見せます。」
その笑顔はバレットさんの目に映ったのか、バレットさんは何かを感じ取ったのか、それは僕には分からないがバレットさんはそんな風に宣言をして、そして大きくなっていくクロモヤに剣を向けた。
「バレット、カッコよく宣言したあと悪いけどとりあえず、僕の足のクロモヤを外すの手伝って、一回この場から距離を取りましょう。早く、外すの手伝ってください。」
そう僕が言っている間にもどこかからクロモヤが集まり続けていた。
「足のクロモヤは、とりあえず剣で叩けば良いんだな。徹。それで、なぜ一度距離を取る、俺はもうビビッても怖くても向き合うって決めたんだ。」
そうバレットは言いながら僕の足のクロモヤを叩き斬ってくれた。
「違うんですよ、こういうのは、大爆発するって相場が決まっているんです。とりあえず、走れ。」
僕はとりあえず、走り出した。感動展開とかそういう流れに世界が傾いていたのだから何でこんな風にピンチになっているか分からない。おかしい、おかしいけど、絶対に爆発するもんだ。
「どこの相場だ、貴様…………。走れば良いんだろ。」
クロモヤは一度大きくなって、それがだんだん、一点に収束していった。知ってた。
そして、強烈な衝撃波とともに爆発のような何かが起きた。
爆心地には、先ほどとは違う、黒騎士が立っていた。それはもう絶対にバレットさんの父親ではない、それだけは分かった。
『グギギギ』
そんな奇声とともに黒騎士はこちらに向かって動き出した。どうやら、ここからが本当の闘いの始まりらしい。
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