第49話 夢
多分これは夢である。僕は動けなくて、ぼやけながらも何か話している風景が見えていた。話している人物は見たことがあるようなないような人物だった。
「女神様は偽名のセンスがないというか、安直ですね。」
よく見えなかったが美しい天使の羽根を持った青年のように見える人物がそう言葉を発した。
「うるさい。勝手に死んで勝手に怨霊のように急に私の前に現れてなんなわけ?」
もう一人は女性だった。顔などはよく見えなかったが、何か神々しいオーラを放っていた。しかし、その神々しさと異なり、言葉は普通のただの人間のように聞こえた。
「怨霊というよりは守護霊のつもりなんですけど。」
青年に見える人物はそう笑いながら答えていた。
「守護霊?守護とか君には向いてませんよ。私の守護者とかを名乗ってた癖に死んでしまったじゃない。」
女性は少し怒りを表しながら返事をしていた。その会話から二人が仲が良いことが伺えた。まあ夢だから仲が良いとか悪いとか無いんだけどな。
「でも、ちゃんと君と世界は守りましたよ。」
男は少し飄々としていた。適当なように見えた。その適当さは何処か何か見たことがある気がした。
「それで、君が死んでしまったら意味がないです。何が力を未来に託すですか?あの時に、もっと…………」
女はそう弱弱しく呟いていた。
「それは、もう言わない約束ですよ。女神様。」
青年は珍しく真剣にそう答えていた。
「………それじゃあ、なんでこの子に能力を継承したわけ。この子の命がいくつあっても足りないじゃない。この子の心が持たないじゃない。それにあの子、貴方の能力が何の役目があるを知らないでしょ。」
この子?誰のことだ?僕のことか?なんて変な夢なんだ。
「それは、事故?いえ誰かの故意の出来事ですね。まあ、こいつなら大丈夫だと思いますよ。それに役目を役割を押し付けるのは違うじゃないですかね。」
何の話だ?全く身に覚えのない話を夢で作り出してるのか?夢で作る話は大体何かしらの原因や経験から作られる気がするが身に覚えがない?てかそもそも夢で夢だと分かるのか?分かったとしても動けないのは何故だ?これは夢じゃないのか?じゃあ、何なのだ?
「それでも、君の能力は狙わるでしょ。だから私はそれを持っているあの子の力になりたいの。あの子、なんか変だし。」
女性はそういった。もし夢ならば自虐だが、これが夢でないならば多分、あの子が僕のことを指しているはずだ、そしたら酷い話だ。
「…………」
青年のような人物は何故か黙った。
「もしかして、なんも考えてなかったの?ルシファー。」
ルシファー…………ルシファー…………それってダンジョンの悪魔の名前の一人。もしこれが、夢じゃないなら、僕はあのダンジョンで能力を受け継いでる?いや、でもそれは不可能だ。だって僕の状態的に多分スキルとか増えないし。
「…………どうやったら、こいつに能力の説明出来る?」
ルシファーはそうつぶやいた。
「直接頭に語りかけたり出来ないんですか?」
「それは、こいつがピンチなら出来るけど…………」
そう言えば昔見たことのない声を聴いた記憶が、ダンジョンに入りたての時にそんな記憶が……いや、時系列的にあれはただの幻聴か。だってダンジョンクリアする前だし。
「なるほど、それなら私が外で何とか説明してみますよ。それで、ルシファーさんの能力ってなんでしたっけ」
「覚えてないのかよ。」
ルシファーは少し驚きつつ呆れつつ呟いた。
「正確に覚えてるわけないじゃん、君が死んで何年過ぎたと思ってるの?」
痴話げんかが始まっていた。
「いや、そんな忘れるほど複雑な能力でも………あっ、これは時間切れですね。女神様」
そこで僕の夢の、夢のような映像は途切れた。
「徹、起きて、やばいから、てかなんでこんな状態でずっと寝てられるんですか。」
目を覚ますと必死な形相でルナが僕を起こしていた。あれは?何だったんだ?変な夢を見た。夢じゃないかもしれないが、とりあえず。
「何があったんですか?そんなに慌てて」
僕がそうつぶやくとルナは少し困った顔で言葉を紡いだ。
「獣人の里が半壊…………8割ほど壊れました。クロモヤとどこからか現れた謎の生物のせいで。」
ルナの言葉の意味が良くわからなかった。だって対策を立てたんでしょ。謎の生物…………何が起きている?てか、僕は何で気が付かなかったんだ?夢の見すぎだったのか?
「ルナの魔法が通用しなかったんですか?」
とりあえずそう尋ねるとルナは話し始めた。
「そんなことはないんですけど。急にクロモヤがこの里に攻めてきて、それで起きない徹をおいて、防衛を初めて、初めのうちは、攻めてきたクロモヤを私の魔法とか、魔法道具で浄化しながら、多くの人を助けて、そしたらクロモヤの本体まで現れたんです。そこでまず、1つ目の誤算がクロモヤの本体の強さが異常で、それで力の関係が拮抗して、なかなか倒せずにいました。2つ目の誤算として、謎の異形の化け物が襲ってきたんです。それで一気にクロモヤに人が飲み込まれていきました。」
なるほど、何かやばいことが起きたことは分かった。クロモヤの本体と謎の生物がめちゃくちゃ強いと
「………他の人は?」
「分かりません、とりあえず、各自全力で逃げることになって私は徹のところにやってきました。」
なるほど、これはかなりまずいかも知れない。まあ、詳しい状況は分からないがすごくまずいってことだ。正直、僕はルナがいるからここから、ルナと一緒に去るのもありだが、まあそれは何というか後味が悪いし、一人寝ていたのは僕だから。
「じゃあ、とりあえず、仲間集めをしましょうか。まあ、寝坊していたから働きますよ。」
「分かりました。徹。反撃しましょう。」
「僕は初攻撃だけどね。」
反撃ではなかったので僕がそういうと
ルナは少し明るい笑顔を浮かべて
「徹がめちゃくちゃ起こしたのに寝てた件については後でルナお姉さんと話し合いしましょうか。」
寝てたことはどうやら少し根に持っているらしい。てか今気が付いたらこの部屋焦げたりなんだりしてる。ルナさん魔法で僕を起こそうとしていたのか?てかなんで僕は起きてないんだよ。
「ははは、それじゃあ、戦いに行きましょう。ルナ、それで里の人を助けて、賃金を貰いましょう。」
そう言って僕は武器を手に取った。
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