第47話 怨霊と騎士3
部屋に戻ると置き手紙がおいてあった。
『徹、私は、あの黒色の奴を払うための魔法道具を作ったりしてアインさんと相談とかしていないので、1時いません。心配しないでくださいね。あと、お駄賃は私がもらっておきますからね。』
なるほど、こんな置き手紙なくても、いや無かったらちょっと困るか。それで、一人になったけど、どうしようか。暇だな。てか、あの黒色のやつ何だったんだ?
その時に僕の部屋のドアがコンコンと鳴った。誰だろう?ドアを開けるとそこには見たことあるようなないような女の人がいた。どっかで見たこと気がする。
「どなたですか?」
それでも分からないものは分からなかった。
「…………えっと、私は、ライと申します。夫と息子が迷惑をかけて、それで何も出来なかった最低な人物です。お優しい皆さんのお陰で私も、被害者として、扱ってもらって、それで、今は自由の身でした。そんな時に再び助けて頂きありがとうございます。」
ああ、あの人か。どうやら彼女は元族長、旧族長とドラ息子の被害を受けていたことから無罪になったらしい?うん?再び助けたって何の話だよ。
「全く身に覚えがないんですけど。」
何か少し怖かった。
「ああ、すいません。徹さんは私が黒色の何かに取り付かれていたことを知らないのでしたね。その時は私を助けて頂きありがとうございました。」
ああ、なるほど、でも、
「でも助けたのはルナなので、ルナに」
「それは、もう感謝しました。そしたら助けたのは徹なので、徹に感謝してくださいって仰られたので、それで感謝しに参りました。」
なるほど、感謝されたとて、お駄賃のためにしたのだから、困るのだが。
「えっと…」
「私に出来ることであればなんでも致します。」
なんか怖かった。なんか全体的に怖かった。
「えっと、その」
いや、そんなこと言われてもだ。困るのである。
「私に出来ることは御座いませんよね。お金が欲しいですか?今私はお金を持っていないので、身を売って…………それとも」
何にこの人、怖いんだけど。凄い怖いんだけど。
「大丈夫です。帰ってください。」
僕は、そう言い残してとりあえず部屋を出た。怖い、怖い、怖い。何この人?なんか怖いんだけど。
それで適当に走り回っていたら、迷った。何処だ?ここ。あっ、この門は見覚えがある。よし、
「どうして人間は里から出ようとしているんですか?」
それは、門番さんの少女の声だった。
「うん?ああ、なるほど、」
なんか、里の出口の近くの一つまでやってきていたらしい。てか、この人も見たことがある気がする。
「なんでこんな所に?やはり、聞いた通りの方向音痴ですね。初めまして徹さん、サリです。ルナさんの知り合いです。」
ああ、なるほど、人質の………なんですぐに働いてるの?休みとかないの?飛んだブラック企業である。てか、
「てか、方向音痴じゃないです。」
「…………いや、私はどっちでも良いですけど。その自分の部屋への戻り方は分かってますか?」
門番のサリさんはそう言った。
「…………」
分かってない、でもあの人が居るかもだから、部屋には戻りたくないしな、そうだ。
「いや、その黙らないでください。」
門番の人物は見た目は10歳ぐらいだが、多分僕より長生きしているのだろう。ああ、頭バグりそう。
「僕も門番の仕事を手伝いますよ。」
これで、迷子を認めずに彼女が戻るタイミングで戻れば合法的に迷子を認めずに帰ることが出来る。天才かよ僕。
「何でですか?急に…………まあ別に私は良いですけど。ルナさんに怒られますよ。」
「何でですか?」
なぜ、ルナに怒られるのだろうか?
「まあいいです。………そうですね、門番の仕事って言ってもすることはないですよ。何もすることはないです。こっちは、謎のクロモヤの魔物は現れてませんし。」
クロモヤ、ああ、あの魔物のことか。
「結局、あれって何だったんですか?」
そう言えば僕のコミュニケーション能力が上がっている気がする。まあクラスにいたときは優斗から間接的に情報が手に入ったけど。今は自分で手に入れないといけないって追い込まれてるからだろうけど。
「えっと、ああ、知らないんですね、あなたは意識を失っていたので。結局正体は分かってないんですけど。少なくとも、まだ攫われて行方不明の人物がいることから、あのクロモヤの本体はまだ何処かにいるってことが分かって、それで助けるための対抗手段を準備しているらしいです。」
なるほど、
「大変ですね。」
まあ、ルナが頑張っているのだろう。
「………なんか思いのほか呑気な生き物なのですね。人間は」
そう僕を見ながらサリさんが呟いた。
「いや、まあそれは人によりけりだと思いますよ。性格はそれぞれですから。」
「あっ…………すいません。」
別に謝るほどのことではない、知らないというのはそういうものである。まあ、謝らなければ、多分少し怒ってしまうのだろうけど。そんなものである。
「じゃあ、謝るぐらいなら、何か面白い話をしてください。」
実際はそんなことより、暇である。
「…………鬼畜ですね。。面白い話をしてくださいっていうやつのハードルは凄く高いのですが…………面白いかどうかは知りませんけど。でも興味深い話はあります。」
まあ、暇なので何でも良い。
「興味深い話って言うのはなんですか?」
「えっと、まあそれは、あのクロモヤがこの里の伝承というか言い伝えに似てるなって」
この里はそんなのばかりなのだろうか?伝承とか伝統とか、女神とか、何だよ。
「はあ、じゃあそれがクロモヤの正体じゃないですか?内容は知らないですけど。」
「えっと、徹さんはバカなんですね。それなら、そうだと、クロモヤの正体が分かっているじゃないですか。だから似ているだけで違うんです。」
確かにそうだが、ムカつくな。
「それで、その伝承は?」
その伝承を要約すると先祖の霊が白い、透明な光輝くモヤで現れるが、もしその人物が悪い行いをすると黒色のモヤが現れて、霊界に連れていくらしい。まあただの子供のに対する脅し文句らしいから、違うし、それにあのクロモヤは無差別だから多分違うだろって。
「なるほど、まあ良くわからないですね。」
結局のところ、凡人の僕が考えても分からないものは分からないのである。
「人に面白い話を聞いた感想としては最低です。それで、今更ですけど、なんでこんなところにいるんですか?あなたは。」
理由はまあ、隠さなくてもよいか。
「それは、元族長の奥さんのライさんが怖くて」
「…………ああ、あの人。でも、昔は、あんな人でしたっけ?知りませんか。まあ少し怖いのは分かります。それで、次は徹さんが面白い話をしてください。」
なるほど、迷子になろう。
「僕は用事を思い出したので帰らせてもらいます。」
面白い話をしてくださいで面白い話を出来る人間はいない。
「逃げるな、さて次は徹さんのターンですよ。」
サリさんの目はガチだった。地獄の井戸端会議(二人)が始まるらしい。
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