第40話 勝負1

ユグさんに案内された場所に行くと、そこでは、ルナが獣人族の人々に囲まれていた。ルナさんはバリア的なものを張って、少し困った顔で座っていた。

「エルフの人、貴方が悪い人でないことは分かった。だから、あの子のために、」

「私たちは、どうすることもできないんです」

「すいません、すいません。お願いします。お願いします。」

「族長には誰も勝てない。」

ルナの周りの獣人族は涙を流しながら訴えていた。


ルナを助けたいが、僕は大勢を相手に、傷つけずにあの人ごみの中に入るのは、そんな風に考えていた時にルナと目があった。

そして次の瞬間隣にいた。魔法で移動したのだろう。視界に入ったからだろうか?僕にはその仕組みは良くわからない。

「とりあえず、元気そうで良かったです。ルナ」


「うん?まあ徹も元気そうで良かったです。それで徹。私、この里の族長に用事が出来たんだけど。ちょっと付き合ってくれませんか?」

そうルナが言った。まあちょうど良かった。


「それはまあ、ちょうど良かったです。僕も用事あるので、それでユグさん…………」

いつの間にかユグさんは消えていた。


「うん?どうかしたの?徹。」


「ああ、いや、ユグさんに案内して貰ったんですけど。どっかに消えてしまって。えっと、ルナは族長が何処にいるか分かりますか?」


そう僕が尋ねると彼女は、

「多分、分かりますよ。」


「何があったんですか?ルナ?」

そう僕が尋ねると


「話しますね、徹。」


そう言って、獣人族の人ごみを避けながら、バレないように走り始めた。あまりにも走るのが遅いので、ルナを抱えながら走ることにした。



過去回想をルナが話し始めた。


門番のサリさんがいなくなった。結局徹の場所は聞き出せなかったし、まあでも門番がいないって事は侵入出来るって事だ。まあフードで耳を隠しておこうかな?徹を助けに行くか。そう思って誰もいなくなった門から里に侵入した。


何か里は大荒れだった。人が動き回っていた。

「何これ?絶対に徹がなんかしたんでしょ。もう。」


まあ、とりあえず徹を探しますか。人々が走り回る、中を私はとりあえず歩いた。なんかみんな若いな。それにしても何してるんだろうか?この人達、不思議だ。まあ、徹が何かしたなら、この人たちが向かっている方向に進めばいいかも知れない。


「ああ、はぁあ、パパに言いつけてやる。あの人間、許さない。俺様を殴りやがって」

そんな風に言っている人物とぶつかった。


「すいません。」

とりあえず、謝って進もうと思った。


「俺様にぶつかってすまないで済むとでも思ってるのか?俺様を舐めてるのか?今すぐ、ここで土下座しろ?」

変な人とぶつかってしまった。


「………」

無視して進もう。


「お前、俺様を誰だと思っているこの里の族長の息子だぞ。俺様にこの里で逆らうとどうなるか知っているのか?」

族長の息子ですか………私はこの里の人じゃないし関係ないですしね。


「…………」


「お前…………いや、お前見たことない顔だな。ああ、お前が例のエルフか、ははは、これは好都合。俺がお前を」

正体がバレてしまった。それに加えて目の前の人物は下品な笑みを浮かべてごちゃごちゃ言っていた。


確か、徹は

『ああ、それとルナさん、魔法を使うときは、なるべく手加減をして魔法を使ってくださいよ。敵意がない相手とか、殺意がない相手には手加減して魔法を使ってくださいよ。』って言っていた。今この状況で魔法を使うのはセーフだろうか?

まあ、やり過ぎてしまった時は、後で謝れば良いか。


とりあえず、風魔法で思いっきり突き飛ばした。

よし、今のうちにそう思ったが、その変な人は叫んだ。

「侵入者だ。エルフの侵入者だ、俺様のことを族長の息子の俺様のことを攻撃した、捕まえろ。さあ早く、ゴミども捕まえろ。」


「…………」

それを聞いていた周りの人々は唇を噛みしめながらこちらを見ていた。


「早くしろよ。あああ、お前ら死にたいのか?パパに行ってぶっ殺してもらおうか?君らの家族も親戚もみんなみんな死んじまうかもな。」

獣人族の人々は唇を嚙みながら、こちらを見た。

ああ、なんか嫌だな。


私の目の前に少女が現れた。

「待ってください、皆さん。ルナさんは悪い人じゃありません。だからお願いします。あんな人の言うことなんて聞かないでください。」

それは、サリさんだった。


「サリちゃん、何を言っているの?」

「サリちゃんそこをどきなさい」

「サリ、」

多くの彼女のことを案じる声が聞こえた、サリさんはどうやら人気ものらしい。


「うるさい、うるさい、私はずっと思っていたの、こんなのおかしい窮屈だって、私たちは人です。生きている人、あの族長たちの奴隷じゃない、ルナさんは、常識とかそう言うのはなさそうだけど、でもこの状況を何とかしてくれる気がするし、それに私は、この自分は偉くないの偉そうにしているこのおじさんが嫌いです。」

サリさんはそう叫んだ。


「おじさん、だと。サリ、俺様に逆らったな。お前は死刑だ。」

そう変な人が、偉そうにしている族長の息子がそう言ったので、とりあえず魔法で族長の息子を軽く焼いた。そして、その場が、静けさに包まれた。最初は私が攻撃したからだと思った。しかし違った。



「バカ息子が、俺の顔に泥を塗って。それでもかわいそうに、俺の次にえらいお前がこんな目にあるなんて、大丈夫息子の仇ぐらいはとってやるのが親だからな。」

気が付いた時には、私の目の前にさっき攻撃した人物とそっくりな、本当の正真正銘のおじさんがいた。体型はだらしなくて、少しこの里の人たちとは違う印象を受けた。

しかし、動きは速かった。いつの間にかその人物はサリを捕えていた。そして、その次の瞬間には、私から離れた位置にその人物はいつのまにか移動していた。


「お前ら、ゴミどもに言うことがある。最近、俺に対する忠誠心が足りないようにみえる。だからまずはこの小娘を神殿で処刑する。でも俺は優しい。お前らが、そこのエルフと侵入してきた人間をお前らの手で殺して俺の前に差し出せば、この小娘は解放してやる。時間は2時間だ。ああ、俺優しい。」

その中年は妙に恰好をつけて、理不尽で自己中心的で無茶苦茶な要求をしてきた。とりあえず、私はサリを助けるために動こうと、そう思った。



回想終わり



「ルナは、助けに行きたかったけど、葛藤している獣人族の人を見て攻撃することも動きことも出来なかったってことですか?」

そう僕が尋ねるとルナは、頷いた。なるほど、とりあえず、どういう能力かは不明だが、族長は強いっぽい。しかし、ここまで来たら何とかするしかないので何とかしよう。多分、気合で何とかなる。そんな思考放棄をしつつ、さらに進んだ。


「それで、どうして神殿の場所を知っているんですか?」

そう僕が尋ねるとルナは


「サリさん、徹が捕まってる場所はいくら聞いても教えてくれなかったんけど、神殿の場所とかそういうことはちょこちょこ教えてくれたんです。だからとりあえずは、神殿に向かって、族長をぶっ飛ばして、サリを助けましょう。」

そんな風に少し明るく振舞っている感じでルナは声をあげていた。しかし、分かった、流石に僕でも分かる。ルナは少し落ち込んでいる、自分のせいで人が捕まったことに、だから僕は早く着くように、走るペースをさらに上げた。

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