第4話 異世界王宮生活の始まり3

「なんか知ってたよもう。」

部屋に戻ろうとした帰り道で一人そうつぶやいた。そりゃ2回迷子になったのだから、3回目の迷子になるだろう。むしろ3回連続で迷子にならなかったら、おかしいいだろう。おかしくはないけど、そう言う流れになっていたのだからまあ、迷子になるのは必然である。まあそれでもクラスメイトに会えたのだから多分、迷子状態から抜け出せそうであった。


「ねえ、ここがどこか分かる?」

出会った二人のクラスメイトは、月野 はじめと八雲 昴であった。彼ら二人は非常に仲が良い男子二人で、あまりクラスでは目立つ方ではなかったが、まあ普通に話すといい人たちだし、なんというか、クラスで割と中心になぜかいる、成瀬とかいう人よりも数億倍人間性が良いように見えていた。というかそうだったはずなのだ。

完全に様子が違った。


「黙れ、選ばれし俺に何軽口を叩いている。」

そう月野はじめは言った。


「えっ?」

いつもと違いすぎて混乱した。僕の知っている彼は「えっと、確か。ここは」なんて言いながら普通に答えてくれるのだ。


「だから、選ばれし、主人公の俺になぜ軽口を叩いている?」

異世界に来て、スキルを得て性格が変わったのかしれない。もしかすると本当の性格がこっちだったのかもしれない。


「は、はじめ、そんな言い方は。」

そう八雲 昴がビビりながら言うと


「黙れ、八雲。お前みたいな雑魚とまだしゃべってやってる俺様に何か指図するのか?寺坂 徹、今すぐここで俺に謝罪しろ。軽口を叩いたことを謝れ。」

そう言って月野はキレていた。怖え。


「それは、まあ軽口を叩いた事は不快だったら謝るけど、でも主人公っていうやつは君のような横柄な態度を取らずに、誰かのために、嫌いな相手でさえ助けようとするやつをいうから。君は主人公なんかじゃないだろ。」

少なくとも僕が思う主人公は優斗のようなやつのことだった。だからまあ、言い返さなければ、揉めない所で言い返してしまった。


「黙れ、黙れ、黙れ。今ここで俺の力を圧倒的なスキルの力を見せつける必要があるらしいな。寺坂 徹 貴様も、神崎優斗も俺から見たら全員ゴミなんだよ。」

そう月野君が言うと何か彼の周りに黒色の球体が一つ表れて、その球体が僕の腹部にぶつかり、後方に飛ばされた。一瞬状況が掴めなかったが、すぐに先生で僕が攻撃を仕掛けられた事が分かった。


僕にぶつかったそれはかなりの質量がある何かで、少なくともドッチボールが腹部に当たるよりも痛みが強かった。これが、月野君の、月野のスキルということか。なんだよ、これ。


「いきなり攻撃してくるとか卑怯ですね。流石主人公ですね。」

僕に1ミリも勝ち目が見えなかったが、それでもそんな悪態をつくことは出来た。ああ、これは、こんなの何回も当たると死ななくても多分重症にはなるな。でも友人を馬鹿にされてそれで攻撃をされて、おいそれとひける理由などなかった。


「馬鹿にしやがって、ボコボコにしてやるよ。」

その月野の言葉で謎の黒色の物体は無数の球体に分裂して、僕に向かって襲い掛かった。初めは避けようとしていたが、早すぎて避ける事が出来ずに数発当たった。当たったことはないがデッドボールってこのぐらいの痛みなのだろうか?避けるのは無理だと悟り、避けることを諦めて前に進むことにした。

どうせ避けれないのだから避けるだけ無駄だ。暴力は良くないが一発ぐらい思いっきり殴っても良いだろう。むしろお釣りが出そうだ。無数の黒色の塊の打撃で、その痛みで倒れそうになったが、それでも前に進み続けた。それで右手に全てを込めて、月野の向けて拳を放った。


そして多分、右手を骨折した。右手は月野ではなく突然そこに現れた。黒色の硬い何かにぶつかったのだ。

噓でしょ。あの黒い何かは防御もするのかよ。

死ぬほど痛い、右手が痛い。


「はっは、はははこれが圧倒的な力の差、才能の差なんだよ。俺が得たスキル闇は、この闇の力でフルオートでの完全防御と闇による攻撃。誰も俺には勝てないんだよ。指導してくれるこの国の雑魚もボコボコにしてやったしな。さあ、土下座して謝罪しろ。」

なるほど、うん。やばいな、スキル闇、ヤバいな。親切な自慢で情報が分かったが、分かっただけだった。全く武術なんかをやってなかった人間が武術をかなり鍛えている人間をボコボコに出来るって。アホみたいな強スキルだろ。さてどうしようかな。


「僕も少しイラついてるんですよね。ボコボコに殴られて攻撃が通じないぐらいで、謝るわけないだろ。バーカ。こっちは友人を馬鹿にされてるんですよ。」

それぐらいの啖呵を切るしか出来なかったが、このままボコボコにされっぱなしも嫌だ。マジでどうしたものか。






……もちろんどうすることも出来なかった。ボコボコにされ続けてた。

痛い、死ぬほど痛い。意識が飛びそう。でもここで逃げることも引くことも出来なかった。まあどうせもう動けないしな。


「君たちそこで何をしているのだ?」

その一言で、助かった。何処かで聞いた声だと思ったら今日、僕の部屋にやってきた第3皇女だった。ありがとう、エル=シャーリー。でも何で僕の部屋を不法占拠していた彼女がここにいるかは良く分からなかった。まあ今はなんでも良い。とりあえず月野らは、少しの悪態をついてこの場から去っていった。



「あの、徹くん、生きてますか?」

僕の名前はアンナさんから聞いたのかな。


「ありがとうございます、姫。それであなたはここで何をしてい……」

あれ、視界が傾き、意識が薄れてきた。やばいな、体が1ミリも動く気がしない。


「シャーリー様やっと見つけま、えっ徹様、何があったんですか?」

そんな声が聞こえた、たぶんアンナさんな気がするが、もう目は開かないので確認する手段はなかった。てか、この虚脱感分からないけど、マジで生命の危機かもしれない。









目が覚めると部屋のベット上に転がっていた。

身体中が痛くない……なんでだ

「何があったんですか?徹様。」

アンナさんの声だった。


「まあ、クラスメイトに因縁つけられて絡まれただけですから、気にしないでください。」

かなり彼に殺意と敵意が向き苛立っているが、そんな事よりも引っかかる点があった。月野の野郎の様子は明らかにおかしかったのだ。性格がもし仮に、もともと内心あのような性格であっても、それでも普通あそこまでボコボコにしてくるか?流石に行動が過激すぎる。何かがある気がする。ここで事を大きくするのは何か、何かを逃す気がしてもったいない気がした。



「その次元を既に超えていましたよ。徹様、死にかけてましたから。」

さらっとアンナさんは恐ろしいことを言った。でもだとしたら僕は凄く長い時間意識を失っていたのか?そうじゃないと全くダメージを引きずっていないかじゃないとおかしい。身体に痛いところが無いのだ。何故だ。


「でも、僕、今痛みすら感じてませんけど。本当に死にかけてたんですか?」


「それは、そこにいるシャーリー様に感謝してください。スキルでシャーリー様が助けたので」


何か回復系のスキルか。あるのだな凄いな、シャーリー様には感謝しないと行けない。回復系のスキルは便利だな。しかし、そのシャーリー様が少し周辺をキョロキョロしたが見当たらなかった。部屋に戻ったのかもしれない。

「そのシャーリー様はどこにいるんですか?」


「そこにいますよ。」

アンナさんは少し笑いながら指を指した。アンナさんが指差す方向にシャーリー様らしき人物がいた。


「なんで部屋の端っこで壁を見ながら膝を抱えてるんですか?」


「そこは聞かないであげてください、徹様。」

アンナさんは優しくそう笑っていた。なんかやらかしたのだろうか?まあ何でもいいか。


「はぁあ、分かりました。僕に何があったかは、僕が死にかけた事は、とりあえず誰にも言わないでください。これは、まだ終わってないので、どうにかして決着をつけるので」

それは半分は本心で半分は誰かの介入があったのかと疑っているので何も言わなければ何か干渉を受けるのでは無いかと考えたからだ。


「バカなの徹君。しし死んじゃうぞ。」

そう壁を見ながらシャーリー様が言った。何で君付けなのかは少し疑問だが、まあ心配してくれるのは普通にうれしい。でも


「まあ死にかけた時はもう一回シャーリー様に助けて貰えば良いので」


「そ、それは………そう言う問題じゃないのだ。私はほとんど徹君のこと知らないけど、命はそんな軽んじて扱っていいものじゃない。」

シャーリー様はそう言ってキレ気味に呟いた。勉強は嫌で逃げるが人間性はかなりしっかりしているらしい。


「まあでも、やられっぱなしも悔しいので、真っ当な方法で安全な方法で一回は倒しますよ。」

そんなことで一つ目標も出来たことだし、とりあえずどうにかしてもう少し強くなろうとこころに決めた。それと同時に月野が性格が激変した原因を探そう。とりあえず、この国に信用出来ない人がいるのは、いる可能性はかなり高くなったことは確実だった。

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