地球が思っていたよりカオスだった件

おひとりキャラバン隊

前作のあらすじ

(この物語は、前作「ホームレスから転生した俺が異世界を統治したら、元の世界がカオスだった件」の続きのお話となります。前作を読まずにこの物語を読み始める方の為に、前作のあらすじ、登場人物について記述します。前作を読まれた方は、このエピソードは飛ばして頂いても差し障りありませんが、ざっくりストーリーを思い出して頂く為にも、軽く読み流して頂く事をお勧めします)


 主人公:ショーエン・ヨシュア


 この物語の主人公であり、物語は基本的にショーエンの一人称視点で展開します。


 元々は地球で生まれたロストジェネレーションの「吉田松影(よしだまつかげ)」。


 1975年に神奈川県相模原市で生まれ、1993年の「バブル崩壊」の影響をモロに受けて定職には就けないままアルバイトや派遣社員を転々とする生活に。


 そんな生活を30年間続けていたが、2023年に勃発した「第三次世界大戦」の影響で日本経済が更に衰退し、吉田は職を失ってネカフェで生活するホームレスに。

 2035年まで日雇いアルバイトをしながらそんな生活をしていたが、ある日、深夜まで交通整理のアルバイトをした帰り道、終電を逃し、歩き疲れて休もうと思って入った公園のベンチで、青白く光っている様にも見える、分厚い本を手に入れる。


 本の中味は全て白紙で、分厚い割に表紙だけは立派な本。


 しかし、特に本に興味が無かった吉田は、公園のベンチで仮眠する為の枕にしようとページを開いて頭を置く事に。


 その途端、膨大な量の情報が頭の中に流れ込んでくる感覚に襲われる。


 その後の吉田は「意識を向けた人や物の過去が見える」という不思議な能力を使える様になっており、その力を「情報津波」と呼ぶ事に。


 訳が分からないままネカフェに帰った吉田が、インターネットで「第三次世界大戦終結から10年」に関する動画を見ていた時、突如襲ってきた「情報津波」によって、第三次世界大戦の裏で行われていた様々な世界の陰謀に関する情報を見る事に。


 にわかにその情報を信じられなかった吉田は、その内容を短編の小説にし、フィクションとしてウェブサイトの小説投稿サイトに投稿した。


 「これが収入源になって社会復帰できれば」と、数十年ぶりに希望を抱いたその日の夜、普段は節約の為に控えていた缶ビールを買って独り祝杯をあげた。

 そして明日への希望を抱いてネカフェのブースで眠る吉田は、その日の深夜に現れた、怪しげなスーツ姿の男達に毒薬を吸引させられ、自覚も無いまま静かに息を引き取った。


 何も知らない吉田が次に目覚めた時、知らない世界で自分が生まれたばかりの赤子になっている事を知る。


 見た事も無いその世界は、地球では無く「プレデス星」という惑星だった。


 そこは地球とは比較にならない程の技術発展を遂げた世界で、吉田は「ショーエン・ヨシュア」として、まるでSF小説に出て来る未来都市の様な世界で幼少期を過ごす。


 争いも無く平和な世界で、乗り物は全てが自動運転。まるでUFOの様に宙を浮く乗り物は便利だし、人々の心はとても穏やか。


「強欲と傲慢」が罪とされる世界で、善行を行えば仕事が無くても不自由無く生活出来るだけの報酬が政府から支給される為、人々はお互いに善行を重ね、競争する事など考えもしない世界だった。


 平和でのどかなその世界は、一見何の欠点も無い様に思えたが、人々のコミュニケーションも希薄なこの世界は、地球人としての記憶を持つショーエンにとっては、あまりに退屈だった。


 この世界でも「情報津波」が使えるショーエンは、幼少より学業は上位にあり、中等部などは主席で卒業する事が出来た。


 品行方正を演じて来たショーエンは、父のタルキスの勧めで12歳の時に体内にデバイスを埋め込む事に。


 この「デバイス」とは、ゴマ粒程の超小型量子コンピューターであり、通信機の役割も担っていた。膨大な情報を脳に蓄積し、その情報の整理や出し入れなども、このデバイスによって行う事が出来た。


 プレデス星の大人は、子供と話す時以外はあまり言葉を口に出す事はせず、デバイスによる音声又は文字通信で会話をするのが一般的だった。


 おかげで街は都会であるにも関わらず、静かで人々の交わりも少ない。


 ファッションや恋愛の概念は無く、人々は一様に白いフードを着ており、結婚は政府が遺伝子情報から自動的にマッチングさせる仕組みになっていた。


 娯楽など見た事も無く、エンターテインメントなど存在もしない。


 そんな退屈な生活に飽き飽きしていたショーエンは、中等部を主席で卒業した後の進路を、自ら世界を構築する事が出来る「惑星開拓団」に定め、その知識の習得の為に、プレデス星を出て、学園がある「クレア星」へと移住する事に。


 クレア星とはプレデス星が初めて開拓に成功した惑星とされており、ショーエンはクレア星の首都にある惑星開拓団員を育成する為の学園に入学した。


 クラス分けを決める為の入学試験でショーエンは「情報津波」を駆使しながら学園史上最高点をたたき出す。


 優秀な生徒、上位7名が集まる「Aクラス」に振り分けられたショーエンは、クラスメイト達とクレア星での学園生活を送りながら、様々な発明をサポートして、いつしか学園の有名人になってゆく。


 クラスメイトは次の6人。


 ●ティア・エレート

 電気の仕組みを研究する栗色の髪の大人びた美しい女子。物事の分析力に長け、自分の存在を高く評価するショーエンに恋心を抱くようになる。ショーエンの影響でコミュニケーション能力を開花させ、クラスのリーダー的存在のショーエンに次いで、サブリーダー的存在として定着する。やがてショーエンへの恋が実り、恋人の地位を得る事になる。


 ●シーナ・カレン

 電波や音波などの「波」を研究する薄い青髪の童顔女子。ショーエンが居なければ学園での成績首位だった筈のシーナだが、断トツの成績で首位に君臨するショーエンを尊敬し、ほとんど盲目的に崇拝している。ティアよりも小柄で子供っぽさが残るシーナだが、ティアとショーエンの関係を見ているうちに、ショーエンへの気持ちが崇拝から恋心へと変わって行く。時々、奇天烈な発言や発想をする事があるが、それらは全てシーナの中では理論的な考えに基づいており、本質的にはショーエンよりも有能な天才タイプ。


 ●メルス・ディエン

 銀髪の美少年。プレデス星の「全てが自動制御」の乗り物に不満を感じており、「自由に自分の意志で操作できる乗り物」を実現する為に学園に入学。

 クレア星でショーエンが最初に出会ったのがメルスで、中等部ではショーエンと同じ学校に通っていた。コミュニケーション能力に乏しいプレデス星人であるにも関わらず、クレア星では自らショーエンに声を掛けるという勇気を持ち合わせている。

 学業は優秀ではあるが、学園の中では凡人レベル。

 しかし、バランス能力が高く、クラスの空気を中性的に和らげる役割を無意識にこなす。


 ●ライド・エアリス

 黒髪で褐色肌の美少年。クラスメイトの中で唯一のクレア星出身者で、人間の生殖行動について少しばかりの知識を持っている、プレデス星人の視点では稀有けうな存在。

 故郷の空を飛ぶ鳥を見ているうちに「自分も空を飛びたい」と思う様になり、飛行機の研究を行う為に学園に入学。

 圧倒的にプレデス星人が多い学園内で、少数派のクレア星人として引け目を感じており、なかなか他人と関わろうとしなかったが、ショーエンのアプローチによって仲間になった。「乗り物の研究」という点でメルスと意気投合し、いつもメルスと一緒に行動する様になる。


 ●ミリカ・ファシル

 栗毛で長髪の美少女。ファッションの概念が無く、衣装が白いローブしか無いこの世界で、自発的にファッションの概念に目覚めた。ショーエンのアドバイスにより様々な衣装をデザインし、やがて学園の制服や下着、パジャマ等を文化として根付かせる事に。

 最初に話しかけてくれたイクスに恋心を抱く様になり、やがてイクスと学園内で結婚する。


 ●イクス・イエティ

 金髪を短く角刈りにした少年。見た目は精悍だが性格はプレデス星人らしく内気。

 惑星開拓団に入団して、現地食材での食糧生産が出来る様にする事を目指して学園に入学。

 ショーエンのアドバイスにより様々な料理を作る事が出来るようになり、やがて学園の食堂メニューを革新的に発展させる。

 ショーエン達のグループでの料理番として活躍し、様々な調味料の開発を成功させてショーエン達の胃袋を満たす事に。

 ショーエンとティアやシーナ達とのスキンシップを見ているうちに、ミリカとスキンシップをしたくなったイクスは、内気な性格だった割に、料理を使った積極的なアプローチでミリカと相思相愛になり、やがて学園内でミリカと結婚する事になる。


 こんなクラスメイト達と共に、ショーエンは学園の頂点で居られる様に画策し、その年の試験で「学園史上最高成績」をたたき出して学園の教官達の注目を浴びる。


 結果、担当教官であるシリア教官の能力を超えたと判断されたショーエン達は、特別研修授業として、惑星開拓団の活動に従事する事を認められる。


 そこでショーエンは、ティアとシーナの両方と結婚する為に、「一夫多妻制」の法が適用されている「テキル星」を研修先として選択し、Aクラス全員でテキル星に移住する事になった。


 テキル星は、クラオ団長率いる惑星開拓団が統治をしていた。


 クラオ団長は老齢の女性で、遺伝子研究に長けており、様々な遺伝子を操作する事で「龍」を創造する事が出来た。


 ショーエンはクラオ団長を承認者として、その場でティアとシーナとの結婚を果たす。


 さらにクラオが地球を訪れた事もある事を知り、ショーエンはクラオが日本でまつられていた龍神「クラオカミノカミ」ではないかと考える様に。


 そうしてショーエンは地球を目指したい欲求を更に膨らませる事になる。


 テキル星でもクラオ団長は「龍神」として崇められており、地上の人々は「龍の怒りに触れない様に」という価値観を軸に生活をしていた。


 元々はプレデス星人の統治の下で、惑星開拓団の遺伝子操作によって作られた人類が地上で生活をしていたが、テキル星ではプレデス星人の遺伝子を受け継ぐ純血の民族は減少しており、地上のほとんどの人類が「現地で繁殖した人間」だった。


 テキル星の人間社会には貴族制度があり、貴族と認められるのは「プレデス星人の遺伝子を受け継いでいる者」だけだった。


 しかし現実は、歴史と共に純血のプレデス星人はほとんどおらず、現地人との交配によって生まれ、プレデスの血が薄まった混血人ばかりになっていた。


 貴族の格は、プレデスの血が濃い程高貴であるとされ、地上では、時折クレア星からテキル星に移住する人間の遺伝子を巡って争いが起こるという歴史があった。


 その醜い戦いをクラオが遣わした龍が破壊によって収め、その後は中世レベルの技術しかないが、平和な生活が送られていた。


 しかし、テキル星の東の大陸では「罪人の星」と呼ばれる「レプト星」からやって来たと思しき連中が「魔王」を名乗って大陸を支配していた。


 ショーエン達は「龍神の御使い」という立場で様々な問題を解決してゆき、テキル星で出会った新たな仲間と共に魔王を倒し、テキル星に新たな文明の基礎を築いて行った。


 テキル星で出会った新たな仲間は2人。


 ●ガイア・マルテル

 アメリカで学生として2018年まで生きた記憶を持ったまま、ショーエン達より先にクレア星に生まれて学園を卒業した青年。ショーエンの様な特殊な能力は無かったが、クレア星で燃料エネルギー資源の採掘をする家に生まれたおかげで、資源採掘や燃料を使った道具の製造が出来る為、テラと共にテキル星に移住して、商人として生活していた。

「いずれ地球に帰りたい」という希望を胸に日々生きて来たところにショーエン達と出会い、行動を共にする事に。


 ●テラ・マルテル

 ガイアの妹。ガイアと同じく地球での記憶があり、元はガイアの恋人だったのだが、クレア星で生まれ変わった時はガイアの妹になっていた。

 2018年にアメリカでガイアと共にバーベキューをしていたが、ガイアと共に事故で死亡したにも関わらず、生まれ変わった時期が異なり、何故かガイアとは3歳離れた妹として生まれ変わった。

 ガイアを一目見て、地球で恋人だったマイケルの生まれ変わりだと悟り、ガイアに続いて学園を卒業してガイアと共にテキル星に移住した。

 テラもガイアと同じく「地球に帰りたい」と強く願っており、ショーエン達との出会いによって行動を共にする事に。


 そうしてテキル星の統治に成功したショーエン達は、クレア星の学園に戻って「史上初の好成績」で卒業し、その報酬として惑星開拓団とは別の新たな組織としてガイア星、つまりは地球へ移住する許可を得る。


 そうして地球にやってきたショーエン達が降り立った地は、何故か1982年の日本だった。


 ショーエンとして生まれ変わったのが、「未来」では無く「過去」だった事を知ったショーエン達は、苦難に満ちていた前世の自分の生活を思い出し、第三次世界大戦が起こらない世界にしようと政治に働きかける事に。


 そうしていくうちに、世界が混沌(カオス)に陥って行く原因を突き止める。


 世界を混沌に陥れていたのは、レプト星人を「神」と崇める一部の人類による政治と経済の支配だった。


 世界的な陰謀を蔓延させている組織に接触したショーエンは「神の御使い」としての力を見せて、アメリカやソ連の主席達を屈服させ、政界を影で操る資本家達の情報を得る。


 そうして彼らの本拠地になっているアメリカに飛んだショーエン達は、彼らが崇拝する「神」が居るとされる「エリア51」に向かい、地下施設で見つけたレプト星人と対峙する事に。


 そこで出会ったのは、プレデス星人と変わらぬ姿をした年老いた男と、ドラゴンの様な姿をしたレプト星人だった。


 そこで様々な真実を知り、ショーエンの能力「情報津波」が、彼らが「地球の意志」に従って作られた「星の記憶」と呼ばれる本という形で与えられたものだと知る。


 そして彼らは話していくうちに、ショーエン達に倒される事が「地球の意志」なのだと悟り、ショーエン達もそれに応える形で彼らを倒す事に。


 レプト星人を倒した時、今度はメルスが「星の記憶」を見つけた。


 その本の姿はショーエンには見えず、メルス以外の誰にも見えてはいなかった。


「星の記憶」を手にしたメルスは、新たな「地球の意思」を受ける事に。


 その「地球の意思」とは、「メルスの遺伝子を受け継ぐ子孫を繁栄させる事」だった。


 やがてメルスはひとりの日本人と結婚し、使命の通りにコツコツと子孫を増やしていった。


 こうして「世界の支配者達」にとっての「神」の存在が、ショーエン達にとって代わり、世界はショーエンが望む様に平和で幸福な社会へと向かって行く様に見えた。


 ショーエン達が定住している日本は、かつての日本と同じく「神の国」と呼ばれ、ショーエンの前世である吉田が過ごした様な、国民が貧困に喘ぐ日本の歴史は塗り替えられた様に見えた。


 しかし、光ある処に陰あり。


 ショーエン達が「神の御使い」である事を快く思わない者達も居た。


 そうして世界は、再び混沌に向かって動き出す事になる。


 この物語は、ショーエン達によって改善された、誰も経験した事が無い1992年の元旦を迎える日本から始まる。


 ショーエン達がそうした動きにどう対応してゆくのか、読者の皆様、どうぞ見守って下さいませ。

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