37. 与えられたチャンス

37. 与えられたチャンス




 そして次の日。朝、教室に行くと大きな荷物を持ってきているカトレアがいる。


「あっおはようございますステラ様!」


「えっええ……おはようカトレア。ずいぶん荷物が多いわね?」


「なんか色々考えていたら、何を持って行けばいいか、良くわからなくなって適当に詰め込んじゃいました」


 たかが2日泊まるだけだぞ?何をそんな大げさな……。


「カトレア。なんだそれ?山籠りでもするのか?」


「違いますよギル君!私はステラ様の家にお泊まりするんです」


「カトレアがステラの家に?へー平民が貴族の家にか……ずいぶん寛大だなステラ?」


「別に普通ですわよ。カトレアは私の大切なクラスメートですもの。」


 そうだ。カトレアはただのクラスメートだ。別に何もする気はないが、自分にそう言い聞かせる。それにもし男だとバレても、魔法が解除されている今なら何とかなる。


「……おいレオン。お前はどう思うんだ?普通じゃありえないよな?」


「え?ああ。まぁステラがいいのならいいんじゃないか?そんなにおかしなことでもないと思うぞ」


「もしかしてギル君、嫉妬してるんですか?私がステラ様の家にお泊まりすること」


「エリスならそう思ったかもな。でもステラだろ?……うん。ないな」


 おい。どこ見て言ってんだよ?失礼すぎるだろ。そんなに胸がないと言いたいのか!?確かに大きいとは言えないけど、ちゃんとあるだろ。毎日毎日詰めてんだよこっちは!そんなことを考えているとギルがオレに言った。


「ステラ。お前ってなんか貴族令嬢っぽくないよな?」


「はい?何が言いたいのかしら?」


「別に?そのままの意味だが?」


 なんだギルのやつ。ずいぶんつっかかってくるじゃねぇか。ちょっとイラっときたな。


「ギル君。それどういう意味ですか?ステラ様は貴族令嬢じゃないですか」


「そのまんまだよ。貴族令嬢ならもっとこう……」


 ギルが言葉を続けようとした時、担任のルーティ先生が来た。そして朝のHRが始まる。今日は特に変わったこともなく、授業が始まった。



 ◇◇◇



 そして放課後。オレとカトレアはリリスが迎えにきているので馬車に向かう。


「ついにステラ様の家に……緊張します……」


「別に私とカトレアは知らない間柄ではないでしょ?心配しすぎじゃないかしら?」


「いえ。それでもやっぱり緊張するものですよ貴族の方の家に行くのは」


 というか、オレのほうが緊張しているんだが、でも別に2人きりじゃない。リリスもいる。落ち着けオレ。そう思いながら馬車に乗り込む。しばらくするとリリスがやってきた。


「お待たせしました。ステラ様、カトレア様。では行きましょうか」


 こうしてオレたちは学園を後にした。そしてしばらく馬車に揺られながら、帰ることにする。


「あのあの!よろしくお願いいたします。」


「お気遣いなくカトレア様。私はステラ様にお仕えしておりますメイドのリリスと申します。お泊まりの間、何かありましたら何なりとお申し付けください。」


 そう、いつも通りニコニコしながら話すリリス。時々チラチラとオレの方を見ているのがわかる。なんだよ……リリスのやつ何かするつもりじゃねぇだろうな?そんなことを考えていると、馬車が止まった。着いたようだ。


「では参りましょうか。ようこそいらっしゃいましたカトレア様。どうぞこちらへ」


「あっはい」


 こうして屋敷に着いた。この2日ならオレはバレても死なない。この与えられたチャンスにこれからどうするべきかをオレは悩んでいた。

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