30. 噛み合う歯車は勝利に向かって⑤

30. 噛み合う歯車は勝利に向かって⑤





 エリスとギルフォードの戦いはまだ続いていた。どう考えても自分に勝てるわけがないのに、なぜこの男はここまで傷つき立ち上がるのか。


「いい加減負けを認めてそこを通してください」


「オレの彼女になるならいいって言ってんだろ」


「私はあなたの恋人にはなりません」


「じゃあ無理だ」


「はぁ……」


 エリスは大きくため息をつく。本当に面倒くさい男だ。


「どうしてそこまで私を?」


「一目惚れだよ」


「嘘ですよね?そんな理由ではないでしょう?」


「なんで嘘つかなきゃいけないんだよ。本当だって」


 エリスは再び大きなため息をついて戦うのをやめる。それはもちろんギルフォードの彼女になるためではない。残り時間を考えてももうステラとグレンのところへは間に合わない。もし間に合ったとしても今から倒して星を奪うことは出来ないからだ。


「……あなたのしつこさは嫌いです」


「え?オレ振られたのかよ?あれ?」


 そう言ったギルフォードはその場に倒れこむ。


「あれ?力が入らねぇ」


「早く治療したほうがいいですよ。私の魔法をあれだけ受けたんですから、あなたこのままじゃ死にますよ?」


「マジかよ……。お前が治してくれたりしない?」


「私があなたを治療すると思いますか?」


「思わねえけど……まぁいいや。もう立てない、オレの負けだな。とりあえずこれを持っていけ。」


 ギルフォードは指で自分の星を弾いてエリスに向かって飛ばす。


「こんなお情けの星などいりません」


「いや?それはお前にとって幸運の星だぜ?この新入生魔法競技大会が終われば分かる。だから持っていきな」



 ◇◇◇



 そして高台にいるカトレアとレオン、『重岩』ラスター=アースランドは魔法競技大会の終了を待っていた。


「さて、無謀な変わり者ステラ=シルフィードは勝ったかな?」


「ステラ様は負けません!絶対に!」


「君はステラを信じているんだね?まぁ君たちは所詮、運だけで勝ち上がったようなものだからね」


「だと良かったな。」


 レオンは不敵に笑う。その顔を見たラスターは少し驚いた表情を見せる。


「……どういう意味だい?」


「今からボクたちの勝利が決まるってことだよ。ステラもギルフォードもグレンやエリスを倒すために向かったわけじゃないってことさ。」


「なんだと?」


「初めからこの勝負はボクたち4人が残っている時点で勝ちなんだよ。ボクとカトレアさんはラスター=アースランド。君との心理戦に勝ったんだ」


「!?まさか……」


 レオンがそう言った瞬間、森全体に通信が入り新入生魔法競技大会の終わりを迎えることになる。


 《お疲れ様です。これより優勝者の発表を行います優勝者は……え?》


 一瞬、学園の運営も星の総数を見て驚いていた。だがすぐに冷静になりアナウンスを再開する。


 《優勝者は……星の総数77個……カトレア=セルディックさんです!》


 その瞬間誰もが耳を疑っただろう。まさかこんな結果になると誰が予想できただろうか。これこそステラの作戦。


 いや……落ちこぼれクラスと呼ばれていた全員の力で優勝へ導いた結果だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る