13. あなたが考えるんでしょ?

13. あなたが考えるんでしょ?




 オレたちは変わり者のレオンと呼ばれる男を探して学園内を歩いている。まずは屋上、そして図書館と見て回ったが、どこにもいない。


「全然いないじゃない……」


「あと行ってないのはどこですかね?」


「……中庭とかか?」


 こうして最後の場所、中庭に向かうことにした。中庭に着いてすぐに、ベンチで寝ている一人の生徒を見つけた。


「あっ。見てください!あの人じゃないですか?」


「うん……多分そうね」


「おーい!そこのお前!」


 声をかけると、その生徒が目を覚ました。


「ん?なんだ何か用か?」


 この男が、あのレオンとかいうやつらしな。髪色は薄い水色だ。寝ていたベンチには分厚い本が何冊もおかれている。本当に独学で勉強をしてるようだ。とりあえずオレはレオンに新入生魔法競技大会の件を話すことにする。


「ちょっとお願いがあるのだけど?」


「お願い?バカにでもしてるのか?君みたいな優秀な血筋を持つ四大の『風神』ステラ=シルフィードがボクみたいな底辺貴族になんの用なんだ?理解不能なんだけど?暇潰しか?それとも蔑みにでも来たのか?」


 うわ……こいつ面倒くさいな……。初対面なのにめちゃくちゃ煽ってくるじゃんか。こういう口が上手そうなタイプ苦手なんだが……。だがここで引き下がるわけにもいかない。


「違うわよ。あなたを勧誘に来たの」


「勧誘?そんなもの必要無い。そもそもボクのような天才が入っていいようなチームではないんだよ。まぁどうしてもと言うなら考えてやってもいいけどさ。とりあえず理由を教えてくれないかな?」


 うぜぇ……。なんか腹立ってきたぞ。オレが拳を握りしめているとカトレアがレオンに話し始める。


「あのレオン君。ステラ様はバカになんてしてないし、本当に力を借りたいだけですよ。もちろん私もギル君も」


「ああ?オレは別に?」


「ギル君!」


「おう……」


 一言で一蹴するカトレア。なんか……女って怖いな……。レオンはため息を吐きながら答える


「そんな感情なんていう不確定要素なんかどうでもいい。ボクが聞きたいの理由だ。それとも言えないようなことなのか?」


 ……こいつマジでぶっ飛ばしてやりたいんだが……。我慢しろオレ!ここで手を出せば問題になるだけだ。ここは大人になって冷静に対応しようじゃないか。そんなことを考えているとカトレアがレオンに言う。


「簡単です。レオン君が変わり者だから仲間になってくれると思っただけです」


「カトレア?それは……」


「はっはっは違いねぇ。カトレアお前面白い女だな?気に入ったぜ!そんなハッキリ言いきれる奴久しぶりに見たぜ」


「あまり褒められると照れちゃいますよギル君!」


 これは漫才か?もうついていけないのだが……。


「ふむ。ずいぶんハッキリ言うんだな。でも分かった。協力する前に一つ聞きたいんだが、その答えによっては協力は断る。……まさか4人だけで魔法競技大会に望むのか?」


 その言葉に顔を曇らせてカトレアが素直に答える。


「それは……はい。」


「無駄だと思うが。どう足掻いても他の四大の勢力のほうが強いし、人数も多い。どうやって勝つつもりだ?」


 レオンは真面目に正論をぶつけてくる。確かに普通に考えれば勝ち目は無いだろう。だがオレたちだって負ける気はない。だからコイツに言ってやる。


「はぁ……がっかりですわね?」


「なんだと?何か勝算があるのかステラ=シルフィード?」


「……それをあなたが考えるんでしょ?過去の歴史的な戦いで、どんなに劣勢でも勝利した事実は少なくないですわ。あなた天才なんでしょ?少ない人数で確実に上位に入れる方法を考えなさいな?できるわよね?」


「……ふん。なかなか言うじゃないか。わかったよ。考えてやるから期待して待ってるんだな!」


 そういってレオンは立ち上がると、校舎の方へと歩いていく。そして振り返ると一言言った。


「明後日、朝10時に王立図書館前広場だ。遅れるなよ?」


 それだけを言うと、今度こそレオンは去っていった。


「ふぅ……やっと終わったわね……。疲れたわ……」


「あはは……お疲れ様ですステラ様」


「しかしアイツ何だったんだ?めっちゃ性格悪かったな?」


「確かに。でも、レオンが授業に出ない理由は分かりましたわ。授業で魔法の基礎を学んでいたら遅い、早く強くなって認めてもらいたいんだと思いますわ」


 レオンはただ『強くなって認めてもらいたい』ただそれだけなんだろう。レオンから出た言葉『底辺貴族』。おそらくレオンは自分のことを底辺だと認めているのだ。だからこそ努力している。周りからの蔑みに耐えながら……。


 そう考えるとオレたちは似た者同士なのかもしれない。平民出身のカトレア、親に認めてもらえないギルフォード、そして底辺貴族のレッテルを晴らしたいレオン。あっ平民出身の教師のルーティ先生もか。


 理由は違うけど、みんな同じなんだ。周りからの目、血筋。そんなもので評価をされている。


 だからこそ、オレたちは魔法競技大会を負けるわけにはいかない。その評価を覆してみせる。こうして魔法競技大会に向けての準備が始まったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る