6. 魔法競技大会とは?

6. 魔法競技大会とは?




 オレが王立魔法学園に入学してから半月がたつ。意外にバレないもんだよな。オレが男でステラ=シルフィードになりすましていると言う事実。まあ、それはそれとしてだ……


「うーん……」


 黒板には大きく可愛い丸文字で『自習』と書かれている。そうルーティ先生はこの時間は用事で出払っている。オレは教室の机の前で腕を組んで頭を悩ませていた。


「どうしたんですかステラ様?」


 そんなオレにカトレアは声をかけてくる。


「いや、ちょっと次の魔法競技大会のことを考えてたのよ」


「さすがですね!私も頑張りたいけど……みんなすごいんだろうな~」


「そうね」


「それにしてもステラ様って本当にお美しいですよね。金髪、翡翠色の瞳でお肌もつやつやだし……まるでお姫さまみたいです!」


「そ、そうかしら?」


「はい!憧れちゃいます!」


 目をキラキラさせるカトレアを見てオレは思う。ごめんな……本当はオレ男なんだよカトレア。心の中で謝罪する。


 でもこの姿なら女の子に憧れられるのも悪くはないかもしれないな……とか思ってしまう。アホかオレは。


「ねぇカトレア。そういえばあなたってどんな魔法が使えるのかしら?実技の授業がないから知らないのだけど?」


「へ?私ですか?私は『炎』と『雷』の魔法が使えますよ!髪の毛や瞳がオレンジですから!」


「どういうこと?」


「平民はみんな髪の毛の色や瞳の色に適性の魔法属性が濃く反映するんですよ!まぁ例外もありますけどね!ステラ様にはあまり関係ないかもしれないですけど」


 例外が目の前にいるぞカトレア。うーん……オレはもしかしたら王族とか貴族の血筋だったりして?まぁ親に捨てられた身としてはどうでも良いが。


 カトレアの話だと、あくまで適性の属性が反映するだけで他の属性が使えないと言う訳じゃなさそうだ。ただし適性外の属性は魔力コントロールが難しいらしい。


 というか当たり前のように接してたんだが、カトレアは平民なのにこの王立魔法学園に入学してる時点で、かなり優秀の魔法能力を持ってるんじゃないのか?なんでオレの……いやステラ=シルフィードの弟子になりたいんだ?


「あのカトレア。初めて会った時に言ってたんだけど、私の弟子になりたいのよね?」


「はい!私はステラ様の弟子になりたいですよ!あっ……でも今は弟子にしてくれないんですもんね……」


 オレがステラ=シルフィードなら弟子にしてやってもいいんだがな……残念だが、オレはエリックだし、ただのならず者だ。そんなやつの弟子になんかしてあげられるわけがない。普通に今の魔法能力ならオレよりカトレアの方が上だろうしな……。


「そういえば、魔法競技大会って結局なにするのかしら?カトレアあなた知ってる?」


「え……。ステラ様……また興味無さすぎですよ。えっとですね場所は王立魔法学園の所有している森で行われます。魔法競技大会は対人戦で個人戦。武器は一切禁止で魔法と知略のサバイバルバトルです。各個人に星のバッジが配られるのでそれを多く集めた人が優勝です。」


 なるほど単純だな。そして星が多いやつが優秀な魔法使いということになるのか。


「星がなくなった場合失格です。それと2時間置きに星が少ない人がどんどんふるいにかけられ脱落します。」


「思ったよりしっかりしたルールがあるんですわね。」


「そして、この魔法競技大会は個人戦ですけど、仲間を組んで協力して上位を目指す人が多いです。複数人の方が簡単に星が奪えますからね」


 確かに効率的ではあるな。まぁ弱い奴らが組んでも格好の獲物のような気もするが……


「あと、この魔法競技大会には王都の王族や貴族も見に来るので、そこで自分の実力をアピールできるチャンスでもあり、将来のコネ作りの場でもあるんですよ!って、これもステラ様は関係ないかもしれないですけど」


「へぇ~そうなのね……」


 ふむ。興味はないが一応覚えておくか。


「じゃあ私たち2人だと少し厳しいかしらね?もう少し協力者がほしいわね……」


「えっ!?」


「あら?どうしたのカトレア?」


「ステラ様……私と組んでくれるんですか?嬉しいです!ありがとうございます!」


 そう言ってすごく喜んでいるカトレア。やめろこっちが恥ずかしくなる。


「ちょっ!そんな大げさに喜ばなくても……」


「だって……私平民ですし」


「そんなの関係ないわよ。私とあなたは友達でこのクラスの唯一のクラスメートじゃない」


 オレも平民だし。なんならオレのほうがお願いしたいくらいだぞ。本物のステラ=シルフィードじゃないしな。とりあえず適当に協力者を探してみるか……。あのワガママ貴族令嬢の言う通り魔法競技大会で結果を残すことが、これから先のオレの学園生活に関わってくるからな。

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