第9話彼女が来る前

「殿、後半刻で許嫁がいらっしゃいます」

と、栗原は時計を見て言った。400年前の、ゾンビも躾ければどんどん、現代の知識を学んでいく。

「栗原、今日の晩飯は鍋だ」

「ほほう。鍋でごわすか。猪鍋でござるか?」

「今は猪鍋は高級料理だ。今夜はキムチ鍋だ」

「ん、きむち?」

「まっ、期待してな。冷蔵庫に冷やしたトマトジュースがあるから飲んでもいいよ」

「殿、れっどあいにしてよろしゅうごわすか?」

「レッドアイ?いいよ。僕には缶ハイボール取って」

栗原は、テレビの天気予報を見ながらレッドアイを飲みながらソファーに座った。

藤岡はハイボールを飲みながら、夕食の準備をした。


「殿のかのじょと申す、おなごは美しゅうござるか?」

「美人だよ!」

「それはそれは」


チリリリンチリリリン


電話が鳴る。

「栗原、オレ手が離せないんだ。電話出て!」

「御意」

栗原は受話器を取った。

「申す、申す、こちら藤岡家」

「宮田さん?でござるか」

「その人、僕の彼女」

「かのじょさんでごわすね?……」

「……それがし、藤岡様との親類、栗原新之丞と申す。……何か欲しいもの?赤子の脳ミソ」

「こらっ、栗原、ぶっ飛ばすぞ!」

「かのじょさん。戯れ言でござる」

「タバコを頼んでくれ」

「藤岡殿はタバコをご所望されているでごす」

「……ははっ、伝えまする」


藤岡は野菜を切りながら、かのじょ何て言ってた?と、手を休めず栗原に尋ねた。


「後、脱糞で家に着くと」

「脱糞?」

「はい」

「十分の間違いじゃない?」

「あ、そうでごわす。脱糞ではなく十分でござった」


2人ともTシャツ姿で、がたいの良さが分かる。胸板は厚く、二の腕は筋肉質だ。

藤岡の肌は浅黒く、栗原は白かった。日光にあびれない身体なので仕方なかった。

テーブルにはカセットコンロ、鍋、具材がおいてあった。


「殿、火を起こさなくてよいでごわすか?」

はぁ~。

「この鍋の下の道具に鍋だけ温める火がつくんだ。火事の恐れもない。後、オレの彼女の前であんまり喋るなよ。レッドアイ何杯でも飲んでいいからさ」

「御意」


ピンポーン


彼女が来た。

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