第一章 キャナリーと不愉快な仲間たち

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「キャナリー、俺と一緒いっしょにいてほしい」


 いきなりどうしたのか、目の前の彼――ジェラルドが真剣しんけんな目をしてそう言った。

 ジェラルドの深く青いひとみに見つめられると、何も言葉が出なくなってしまう。

 一緒にと言われても、森の家に帰ってきてたった数日で、まだまだ家の片づけなどやる事がたくさんあるのだけど……とキャナリーは現実逃避とうひをした。

 なぜなら全く頭が追い付かないからだ。


 ジェラルドとは、つい先日出逢ったばかりである。

 出逢うといっても、森の中で拾ったようなものなので、身元も何もわからないのだけど。

 とにかく真意をさぐろうと、ジェラルドに問いかける。


「ど、どうしたの? ジェラルド」

「俺のけんあるじは、きみだ。危険があった時には、俺は何よりもまず、キャナリーを守る」

「え? ええ?」


 わけがわからず動揺どうようしているキャナリーの手をつかみ、ジェラルドが突然とつぜん引いた。


「きゃっ」


 すると、勢いで彼の胸の中にぽすんと収まってしまう。

 そのままジェラルドはぎゅっとキャナリーをめ、



「だから、俺と一緒にいてくれ――」



 と、耳元でささやいた。突然のことに、キャナリーの鼓動こどうは速くなる。


(……いや、だからなんでいきなりこんなことに!?)


 まさか森に帰ってきたらこんな展開が待ち受けているなんて、だれが想像できるだろうか。

 火照ほてる顔を押さえながら、キャナリーはまだ自分が令嬢だった、、、、、、数日前のことを思い返していた――。

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