第42話『呪いの勇者、生還につき』


 「痛てて、マリエル、もうちょっと優しく抱えてくれよ」


 「私達を置いていく、カケルさんが悪いんです。大人しく掴まってて下さい」


 「そうだよ、カケル。無茶をしたら駄目だから。私達はみんなで一人前なんだからね」


 「エリィの言う通りですわカケル様。私達なら何だって出来てしまうのをお忘れですか?」


 「ったく。エリィ達には敵わんな。早く帰ろう、俺達の街に」


 心臓潰し討伐後、エルムーアに帰還し一応ギルド本部に顔を出すことにした。なんとなくだが、エリィ達が駆けつけて来れたのは、アクアの粋な計らいだろうからな。


 例の一つでも言っておかないと、あの巨乳メガネからビンタされてしまうだろう。丁重に感情しなくては、後が怖い。何かお礼でも持って行ってやるか。


♦︎♦︎♦︎♦︎


 ギルド本部に行く前に、俺達はとある鍛冶屋に訪れていた。


 腕は良いのだが、なかなかの偏屈ジジイである。そんな、俺はある材料を提供したことで仲、意気投合し、自由に依頼を持ち込める程の仲になったんだ。


 その素材ってのが……。


 「よう、カケルか。頼まれてた品、作っておいたぜ。全くよ、なんで俺が、アクセサリーなんか作らなならんのだ。合成屋だろ普通……」


 「ごめんごめん、バルジ。あんたなら、クリスタルを上手く加工出来ると思ったんだ。そんな、起こるなよ」


 首狩りの王のダンジョンにあったクリスタルを、鍛冶屋バルジに献上して、サプライズでプレゼントする為だったんだ。


 頼んだ品は魔力が込められたブレスで、装着者同士が行方不明になった時、近ければ近い程、強く光る代物だ。所謂、探知機のような役割もしている。


 いつ何時離れていても、これさえ有れば大丈夫だからな。アクアにも渡しておいて損は無いだろう。聖堂教会のスパイをやっているからな、その心配もある。


 「ブレスを六つ頼む」


 「は? 一つ多いじゃねぇかよ」


 「世話になった奴に贈るんだよ、いいだろ?」


 「しゃーねーな。持っていけ」


 さっそく、エリィ達にプレゼントした。とても綺麗な事に、驚いてしまう。うちのパーティは、美人揃いだってのもあって装飾品はよく似合っていた。


 「お、可愛いじゃないかエリィ!」


 「ありがとうカケル。カケルには貰ってばかりだね」


 「そんなこと無いだろ。俺も大事なものなら貰ってるさ」


 「ったく。またイチャついてますよ……」


 「マリエルも、可愛いぜ! 胸無いけど!」


 「嫌いです! 死ねぇ!」


 ーーバチン!!


 いつもキレの良い平手打ちな事で、絶好調ですねマリエルさん。こんなに楽しい日常を過ごして居られるのも、みんなのおかげだよな。

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