第7話『呪いの勇者、シスターに殺されかける』


 マリエル・リットナーをパーティに引き入れた俺たちは、充分な金も手に入ったので、今後の活動を考えて屋敷を購入した。


 以前、どこかの貴族が住んでいたと言う、その屋敷を今は住んでいないからと格安で譲ってくれたんだ。ここであればギルドから近いし、何より治安も最高に良い。優良物件だ。


 ある程度引っ越し準備も終わり、俺とエリクシア、そして新メンバーのマリエルでこの屋敷での生活が今日から始められる。


 不安もあるけど大丈夫だよな、最近いい事づくしで逆に怖い。俺たちは、引っ越しの祝いも兼ねて食事会を屋敷で始めた。


 「イフリート討伐を記念して、乾杯!」


 二人は、まだ子供なんでお酒は飲ませられん。アルコールの入っていないシュワシュワを渡してあげて共に乾杯する。しかし、様子が変な事に気づく。


 「かーけーるーさ〜ん。なんか頭がぽわぽわしますー」

 「そんな訳ないだろ正気に戻れ!」

 「カケル、もしかしてマリエルは酔ってるんじゃない?」

 「そんな訳ない! 俺が間違うはずがーー……。 あ、」


|(コイツ俺の酒全部飲んでやがるー!)


 信じられないがこの女やりやがった。俺の大事に取って置いた酒を全て飲み干していた。とんだ酒豪じゃねぇーか。


 「吐けー! 吐き出せー! お前が飲み込んできたもの全てを吐き出せ!」


 「やーですよー。カケルさんのエッチ〜」


 「何がエッチだふざけるな! お前の身体で欲情するか!」


 「じゃあ、誰ならいいんですか? 胸ですか? 私の胸が小さいからいけないんですか!」


 「話しをややこしくさせるな! とりあえず胸の話しは忘れろー!」


 食事会どころではなくなってしまい、酔い潰れたマリエルを介抱しベッドに運んで休ませる。一時間ぐらいがたった頃に、マリエルが目を覚まして酔っていた時の事を思い出し、赤面していた。


 「ごめんなさい私なんてことを……」


 「まあ、気にするな。俺はおっぱいが小さくても気にしないから。貧乳は正義だ」


 「な、何ですか急に! 私の胸は小さくなんかありませんし、気にしてなんかいません!」


 「またまた〜、可愛いですねーマリエルさんは……」


 ーーバチン!!


 頬を平手打ちされてしまった。こんなに心に響かないビンタは初めてです。


 「この変態! 嫌いです!」


 弄りすぎたのか、不貞腐れてマリエルにそっぽ向かれてしまった。


♦︎♦︎♦︎♦︎


 みんなが起床して、リビングに集まってきた。マリエルは少しバツが悪そうだけど、俺にも少しは罪悪感というものもある。一言軽い謝罪を入れておこう。


 「昨日は、悪かったな。せっかくの祝いの場だったのに楽しめなかったよな」

 

 「いいえ。やっぱりこのパーティは最高に楽しいですよ」


 意図が分かって折れてくれたのか、謝罪を受け入れてくれた。ずっと口聞いてくれなかったらどうしょうかと思ったが、そんなことなくて安心した。


 「カケル、お客さんだよ」


 エリクシアが俺に客人が来たと伝えてきたのだが、何だか妙だな。引っ越ししたばかりだし、知人が来る訳でも無い。怪しいが取り敢えず何者か俺は確認する為に外に出る。


 「はーい。どちら様?」

 「初めまして、あなたが噂のカケル様ですか?」


 女性であった。シスターか? 


 修道服を身にまとい、溢れんばかりの豊満な胸を揺らせている。体型はスラリとしているし所謂、セクシーなお姉様だ。正直、可愛い。


 釣られてエリクシアとマリエルが、俺の元までかけつけてくれていた。


 「カケルさん、知り合いですか?」

 「いや、知らない。初対面だ」

 「カケル、気をつけてね」

 「あぁ、そうだな。あのおっぱいは危ない」


 すんごい力でエリクシアに腕を噛まれてしまいました。ヤキモチですかね。そんな必要ないのに。


 隙をついてきたのか修道服の女は、俺に歩みより優しく抱擁をしてくれたんです。胸が当たっている。絶対にわざとだ。


 「お会いしたくございましたカケル様」

 「は、はい!?」


 エリクシアとマリエルに睨まれてしまっていて、背後に緊張が走るが謎の違和感が俺を襲っていた。その違和感は、段々と激痛に変わり気絶してしまいそうな程だった。


 「ギィやー! いだだだだ! 俺死んじゃうー!」

 「か、カケル様!?」


 俺は、あまりの激痛に理性など無くなりそのまま眠る様に地面に突っ伏した。


♦︎♦︎♦︎♦︎


 ーー目覚めた後の話し。彼女の修道服には聖魔法が縫い込められおり、その神聖な魔力に俺は殺されかけたらしいです。


 マリエルに胸が小さいからと、馬鹿にしたからなんでしょうか。或いはこれも呪いの影響なんでしょうか。今はあまり、考えたくありません。



 

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