前編 骨接ぎ屋、十蔵

勘ぐっても仕方がないか……


「きゃぁぁああッ!!誰か!誰かっ!!」


「「?!」」


「お藤!」


「ちょっと見てきます。」


お藤ちゃんの悲鳴が聞こえオイラは仕込み杖を持ち勝手口から出ていくと柄の悪い5人の男達にお藤ちゃんが連れ去られようとしていた。


「ったく!手間を掛けさせやがって。」


「取り敢えず。この娘を御頭に渡せば……」


「待ちな。」


オイラのその一言で刀や槍に木刀に竹棒など武器を持った柄の悪い男達がオイラを睨み付ける。その内の1人はお藤ちゃんを眠らせたのか、お藤ちゃんに意識はなく、担いで連れ去ろようとしていた。


「何者だ?てめぇは……」


「その薄汚れた手からその娘を離せ。」


「おい。何を言っているんだ?」


1人が刀を抜いて俺に近付き剣先をオイラの顔に近付けて、今にも切ってやろうとヘラヘラと笑いながらピタリと止める。


「お前さん。刀を抜くって事は……コケ脅しじゃねぇって事だよな?」


「は?てめぇは何を……」


その瞬間にオイラは逆手持ちで仕込み杖を抜いて抜刀して相手は何も反応出来ずに胸元から血飛沫を沸かせながら倒れ込む。


「う、うわぁぁああッ!!」


今度は槍を持った男が強張った表情で突進してオイラに槍を突き刺すとするがオイラは剣先で槍の矛を受け流し嵐の様に胸と腹に一太刀、また一太刀と斬り付け首を跳ねる。


「どうした?来いよ。」


返り血を浴びて顔から頬を伝い一筋の血が流れ落ちると来ないようだからオイラから駆け抜けると相手は竹棒で叩こうとする。


しかしオイラは刀で竹棒に一太刀、一太刀、また一太刀と竹棒の尺を短くして相手の両腕を切断して胸を心の臓を狙い、突き刺す。


「こ、この娘がッ……」


最後の相手はお藤ちゃんを盾にとりドスで顔を当てるがオイラは仕込み杖を相手の顔を目掛けて投げつけると相手の脳天に仕込み杖が突き刺しユックリと倒れ込む……


「おっと……大将。これは?それに嬢ちゃんの悲鳴が聞こえたから駆け付けると死体の山じゃねぇか。」


お藤ちゃんを抱え込む様に抱き上げた万屋さんは何かが起きたのを察していたから、オイラは事の顛末と与吉さんから聞いた話を万屋さんに粗方話した。


「なるほどねぇ。確かに言われてみれば白牙組が最近になって理不尽な地上げをしているって噂はワッシも耳にしている。狙うのは何故か町から離れた土地を狙っているとかばかり、それに地上げの被害に遭ってる地主が奉行所に行っても門前払いも有名だ。」


「そうですか。やっぱり万屋さんも耳にしていたのですか。」


「まぁ、万屋っていう稼業は噂や瓦版とかに敏感なんでね。それに……相変わらず大将は嵐の様な剣裁きだな。」


「……元々、剣術は好きでしたが人を殺めるのは好きじゃないですよ。」


「そうかい。じゃあ嬢ちゃんを家に戻すか。」


万屋さんはお藤ちゃんを背中でおぶって歩き始めるとポツ、ポツっと晴れて居るのに雨が降り始めた……


雨はイッキに強くなり激しい狐の嫁入りとなった。


「大将。早く行こうぜ。」


「いや、万屋さんは先に行っていて下さい。オイラは……少し雨に濡れたい気分なんで……」


オイラは首に巻いてる襟巻きをお藤ちゃんに被せると万屋さんは何も言わず先に行く。


「不思議なもんだな。こんなに晴れているのに嵐の様に雨が降ってくる。゙狐の嫁入り゙……いやオイラにば閻魔の地獄行ぎだな。」


何故か今のオイラの目には打ち付ける雨の色が赤く、そして生臭い鉛の臭いがしたのは……気のせいだったのかもしれない。


オイラは雨に打たれながら歩いていると、いつの間にか雨は止み七色の橋が見え、思わず足を止めてしまい見惚れてしまう。


「これは……綺麗な虹だな」


少し荒んだオイラの心が晴れたのか頬が緩んだ様な気がした。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る