ー 隠された毒

「頑張ってね!大変だと思うけど。」


この人と関わったら面倒なことになりそうで怖いなという警戒心が透けて見える言葉を、私は一生浴びなくちゃいけないのだろうか。


世間に溶け込んでいるあなた達の優しい言葉で、自分は世間のはみ出し者なんだと痛感させられる。あなた達の優しい言葉で何度だって死ぬことができる。気が付いたら鋏を自分に向けていたし、気が付いたら腕は傷跡だらけだったし、気が付いたら精神科に通院していたし、気が付いたら両親を棄てていた。

私は所謂メンヘラで、お国から“精神障碍者”のお墨付きをもらい先の見えない通院を毎月続けている。定期的にフラッシュバックを起こして痙攣しながら過呼吸で倒れることが人生のサイクルになっている。もはやメンヘラもアイデンティティになっているのではと感じてしまう。


色々あるけれど、私は過去の諸々のせいでメンヘラをやっているらしい。過去の諸々のせいでトラウマが植え付けられていて世間との調和を取ることが難しいらしい。


トラブルがあれば張り切って学校にもクラスメイトの家にも乗り込んで行ってしまうママを嫌がられて友達がいなくなったり、リストカットをしていたら出刃包丁が飛んできて「半端しないで切り落としな!死ね!」と叫ばれる。ママの思い通りにできないと夜中だろうが真冬だろうが鍵と金を没収されて家を追い出される。「あんたが死んだって仕方ないじゃん。親のせいじゃない。」とか「ここは私達の家、住まわせてもらってるんだから親の言うことくらい全部聞きなさい。」が常識。


物心つく前から大切にされることを知らない私の代償は大きい。


「頑張ってね!大変だと思うけど。」

「メンヘラなんでしょ?」

「心弱いんだね・・・」


好き勝手言ってくれるよなぁって思う。


私が出来損ないだと呆れられている隣で両親はすごく良い両親だと持て囃されている。私は両親の批判をするわがままな娘だと決めつけられている。両親が外で見せている善良さを全てだと思える能天気さに腹が立つ。私だって好きでこんな過去を抱えているわけじゃないのに。


ね。


なんて虚しい立場でしょう。

なんて寂しい私でしょう。


黒い髪をした毒親もいるのだ。灯りが付いている家の中でも虐待は日常なのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る