第13話 最後のバツは自分を消すためだった

バツの積み重ねを宮北くんは聞いて、彼女に言った。

『俺がお前のバツを全て飲み込むから、もう無理すんなよ。俺がお前を守るから...いや守るって言うのは物理的に守るってことで、お前が好きなわけじゃないからな』

春は言った。

『分かってる、で...どうするの?』

宮北は言った。

『これは死を伴うかもしれないが、まずお前の血と俺の血を混ぜて、それをお前のバツが出来ているところになぞるようにバツを作るそして、言うんだ『この世のバツは脆くできている。今、このバツよ消え去れ』そして、俺の指輪が吸い込んでくれる。そしたら一斉にバツは消えるはずだ。』

彼女は分かったと言い、試した。

するとみるみるうちにバツは彼女の両腕から消え去ってくれた。

2人は喜んだ。

でも、宮北は気づいていなかった。

彼女の腕にはひとつだけ残されていたバツがあったことを。

そのバツは、自分をこの世から解き放って欲しいと願うバツだった。

彼女は宮北と笑顔でバイバイした。

そして彼女は遺書を書いた。

片方は父と母に向けて、もうひとつは宮北くんに向けてだった。

そして、SNSでも遺書を投稿した。

彼女は自室で事前に準備してあった紐を吊るし上げ、床を汚さないようにシートをひいて、その上に本を積み上げて、窓から見える夜空を見てさよならと手を振り、暗闇の中で彼女は首を吊った。

彼女に見えた最後のバツは綺麗に消えていた。

彼女の死に気づいたのは朝方になって母親が彼女を起こしに行った時だった。

彼女の母親は彼女を見て、泣き崩れた。

すぐに、救急車を呼び、病院に運ばれたが即死だった。

彼女が亡くなったのは夏休み前だった。

彼女が死んだことはクラスのみんなにも伝えられた。

彼女のことをあまり知らない連中までもが、涙を流した。

春の母から宮北に渡したいものがあると家に呼び出されたのだった。

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