第4話 2番目のバツが付いた理由

私が特別でもない誰かなのに、元職場の方々は私を特別な存在として見ていた。

私が何か起こすたびそれは、特別になっていった。

パワハラもそうだった。

1度目のパワハラは周りの方が何を言ってもダメだったのに、私が行動を起こすだけで変わっていった。

それも全部噂になって自分に返ってきた。

噂の広がりはフロア全体に広がっていた。

お喋りさんは職場に何人もいるのだろう。


2度目のパワハラは行動を起こす気にもならなかった。

私はご飯が食べれなくなり7キロ痩せた。

ご飯を食べている時も職員が私を見てくる目線に耐えられなかったのだ。


そろそろやばいと思った時、私は私を失った。

その時、腕にあるバツは半分を越えていた。

父にも母にも私の傷跡は分からないだろう。

だけど、元職場で負ったバツはパワハラだけじゃなかった。

正直、ここでは言いづらい事だから言えない。

でも、介護では普通のことらしい。

私がただ耐えられなかっただけのこと。

要約すると体が不自由な利用者の身体を体の隅々まで洗うと言うことだ。

女性が男性の身体を洗うのだ。

周りの職員はこれは大切なことだといい、私にやってみろと言った。

周りは誰もそのことを止めなかった。

私はやるしか無かった。

それを手伝ってから、ロッカーで泣いた。

やるしない、そんな状況下が怖かった。

周りの職員はそのうち慣れるとか最初は私もつらかったとか言っていた。

でも私はそういう問題ではなかった。

怖くて、あの場所も何もかもが苦しかったのだ。

このことは悩みとして誰にも言えなかった。

母には言ったけど、主治医や心理士には言えなかった。

母の次に話したのはココが初めてである。


私は触りたくもやりたくも無かった。

その時、初めて私の2番目のバツは消えなくなった。

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