第4話お揃い

聞き終えた仲嶺が落とした声量で、彼女の言動の一部に納得したように頷き、呟いた後に怒りを込めた言葉を口にした。

「松原さんがねぇ……解らなくもない。にしても、コウちゃんに罵倒するなんて……許せないっ」

ドスッと右拳をベッドに叩きつける彼女に俺はあたふたと宥める。

「まあまあ、落ち着いて柚葱菜サン……俺を想ってくれるのは、嬉しいよ……だけど、手はあげないでね柚葱菜さん」

「でも……コウちゃんが傷付っ——」

「良いんだよ。柚葱菜のその気持ちが聞けただけで、それだけで……ほんと、嬉しい。ありがとう」

「……ん。コウちゃんがそう言うなら、見守るよウチ」


「ウチとの営みは、松原さんによって削られんのかぁー悲しいなぁ〜」

「ちょっおぉいっ言葉に気ぃ付けてよ!誤解されるようなチョイスしないでもらえます、柚葱菜さんっ!?」

「営みってだけで顔真っ赤にして動揺しすぎぃ〜コウちゃん。高校生の何割かはヤってんだよ〜ウブだねぇコウちゃんはさぁ〜!ウチの想像した?したのかなぁ〜コウちゃんはぁ?」

「しっししぃ、してねぇしっ!してねぇっての!」

俺の右肩に頭を預けていた彼女が勢いよく身体を伸ばし、俺の顔を覗き込むようにして見つめながらからかってきた。

勢いよく否定したが、僅かに脳内を掠めた。彼女の裸体が……しぃ仕方、ないじゃないか。

「ごめんごめん、コウちゃん。からかい過ぎたね、ほんとごめん。そうかぁー、松原さん……」

「……?一人納得したように呟いたのなに?」

「ううん……何でもない。オバさんの夕飯、まだかなぁ〜」

彼女が視線を右足の足首に落とし答え、天井を仰ぎながら話題を逸らし呟いた。

彼女の右足の足首には、ミサンガが巻いている。赤や黄、オレンジといった暖色の糸が編まれたミサンガが。

俺の左足の足首にも色違いのミサンガが巻かれている。

彼女と唯一、お揃いなのがミサンガだ。

彼女がミサンガに願うとすれば、それは……部活のことについてだろう。

先程のタイミングでミサンガに瞳が向かうのは不自然に感じた。

「気になるなぁー……って、食べてく気かよ。図々しいなぁ、ほんと……」

「美味いからね〜オバさんの」

普段の表情に戻っていた彼女だった。

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