悪役令嬢ですがバッドエンドを阻止するため、家出を試みたら、闇落ち王子を拾ってしまい、なぜか魔女と呼ばれるようになりました
うさぎ咲
プロローグ 悪役令嬢に転生してしまった
また、夢を見た。
「ねえ、由依!あれ見た?『巫女様の下剋上大作戦!!』の悪役令嬢、ソフィアの退場シーン!!」
「見たよ〜。でもさ、ひどくない?国外追放のうえ、そのあと知らない男に殺されたって」
「だよね〜。で、王太子の手先じゃなかったんでしょ?」
「うん。そうみたいだよね。じゃあ、誰だったんだろう??」
「その男さ、結構顔はイケメンそうだったじゃん?しかも、結構身分高そうな格好してたから、SNSでは『闇落ち王子』って、呼ばれているらしいよ」
「ふ〜ん、闇落ち王子、ねえ」
今、大ヒット中の少女漫画『巫女様の下剋上大作戦!!』
アニメ化、さらには乙女ゲーム化もされている、今一番売れている漫画だ。
「ねえ、由依。大学どこ行くか、決めた?」
「うん?大学かあ。適当に、家出ればいっか、みたいな」
「さすが、首席は違うねえ」
「はははははは。でも、楽しく、80歳くらいまでは生きたいな〜」
私は、家族が嫌いだ。
父は勝手に浮気をするし、母はそれに気づいていても何も言わない。なぜなら、母はでっかい病院の院長だから。テレビの撮影現場になったり、あの、ポロフェッショナルに出るくらいの。だから自分のイメージダウンになるようなことは、絶対に認めない。だから、私は早く家を出て、独り立ちするんだ。
「由依!!!!危ない!!!!」
え?気づいた時には、もう遅かった。私の目の前に、トラックが突っ込んできたのだ。
えー。さっき、80歳くらいまで生きたいって言ってたところなのに、16歳で死んじゃうとか、笑えないわ。でも、死んだって、私の家族は誰も悲しんではくれないでしょうね。それもまた、悲しいなあ。
キキィィィィという耳を引き裂くようなブレーキ音と、キャーという声が、私の聞いた、最後の音だった。
ああ。もしも、私に次の人生があるのなら、その時は、誰かを助けられるような仕事につきたいな。そして、「恋」をしてみたい
パチ。と、目が覚めた。私は、よく、この夢を見る。
知らない誰か、の夢でもなく、私が作り出した妄想でもなく、私の、
「あー。よく寝た!!」
「ソフィア様、おはようございます!!」
「あ、おはよう!!ミア」
「ご飯、できておりますよ。ちゃんと、毒見しましたので、大丈夫です」
「あ、ありがとう」
ストレートな銀色の髪に、勝ち気そうな、赤色の瞳。
鏡に映るのは、絶世の美少女。それが、私、ソフィア・ライトフォード。
そう、私は、人気少女漫画「巫女様の下剋上大作戦!!」の悪役令嬢に、転生してしまったのだ!!!!
私が、前世の時の記憶を思い出したのは、5歳の時。
料理に毒を盛られて、生死の淵を彷徨っている時に、思い出したのだ。
「ソフィア様、今日は天気がいいので、布団を干そうと思うのですが」
「わかった!!私も手伝ってもいい?」
「もちろんです!」
この子は、ミア。
両親や、ほかの侍女たちに疎まれている私に、唯一尽くしてくれる人だ。私よりも年上だが、めちゃくちゃ美人。可愛い系ってよりかは、クール系。
私の、お姉ちゃん的ポジションだ。
私は現在10歳。原作では、ソフィアが、王太子、ラファエル・ウィリアムズの婚約者に選ばれるのが、10歳。だからもう、猶予はないのだ。
しかし、私には玉の輿になる!という目標はない。どちらかというと、私の目標は、「平和に、幸せになる!!」だ。
だから、まず、最初にすべきこと。それは、「王太子の婚約者に選ばれないこと」
原作では、ラファエルがソフィアに一目惚れして、無理やり婚約者に押し切った。ということになっている。そして、その後が、地獄の始まりだ。ソフィアの両親が、なぜ自分の娘ではなくソフィアが選ばれたのか、と激怒する。しかし、王の命令には逆らえないので、ソフィアを貴族令嬢と仕立て上げる。
その教育は、ほとんどが虐待だった。そこでソフィアの心は暗い闇の中に落ちていく。
だから、絶対に、婚約者にならないようにするのだ!(ガッツポーズ)
「ねえ、ねえ、ソフィア。一緒に遊ぼうよ」
その時、小さな声が聞こえてきた。
「わかった。今日は、何する?」
小さな声、その正体は、妖精。
この世界は、魔法が使える。元々、この原作が、主人公(巫女)が魔法を使って、この世界を幸せにする!!的な話だったから。
しかし、ソフィア、つまり私は、魔法が使えない。簡単な話、魔力がないからだ。
魔法は、主に、火・水・風・氷・雷・土・光・闇の8つ。ほとんどの人がこのいずれかに特化している。
「いーな。私も魔法使いたいな」
なんて思っていたら、小さな声が聞こえた。
「え!魔法使えないの!?」
一瞬、え?私、もしかして幻聴が聴こえるようになっちゃった!?と、マジで心配したのだが。
「え!!誰?」
「え!!私の声、聞こえるの?」
「うん、聞こえてるけど」
「うわー!すごーい!!私ね、妖精なんだよ。心が綺麗な人と、
「ふーん」
はい。これが私が、初めて妖精と喋った瞬間です。
結構、妖精って、軽いな〜って思いました。
妖精は、この世界にたくさんいて、いろんな所に散らばっているそうだ。そして、その妖精を纏めるのが、妖精の一番上の、精霊女王。
だが、まれに、妖精や精霊に愛され、妖精を愛する、「妖精姫」
彼女が言っている、素質が、「
「あ、ねえ、スイ。今日はさ、いろんな国を見てみたいの!!だからさ、視覚共有、お願いできる?」
「もっちろん!!ソフィの頼みなら!!」
スイ、というのは、私が初めて喋った妖精につけた名前。なぜか懐かれちゃって。名前はないの?って言ったら、ない!!って言われたから、スイってつけたのだ。意味は簡単、「水」の妖精だったから。
「ミア、外出てるね!!」
「はい。あまり遠くへ行かないように、気をつけてくださいね」
私の母は、元々正妃付きの侍女だったらしいが、伯爵、つまり、私の父親に見初められて、側女になったらしい。だが、私を産んですぐに亡くなり、私が邪魔だった正妃に、家を追い出されて、この離れに住むことになったのだ。
「よいしょ」
今の私のマイブームは、近くにあるでかい木に登って、外を見ること。一応、街に出ることはできるが、この髪のこともあって、目立ってしまうのだ。銀色の髪に、赤色の瞳は、不吉なもの、として扱われているから。
「スイ、お願い!!」
「OK!」
私は近い将来、家出をしようと思っている。どうせ、正妃は私のこと嫌いだし、こんなことしてたら、絶対に婚約者には選ばれないし。だから、今のうちから、脱出ルートと、隠れ家を見つけているのだ。
それで、私が今目をつけているのが、「誘惑の森」
妖精や精霊たちが守る森で、入ったら、二度と出られないと言われている森だ。心の綺麗な人は出られるみたいだけど。
「うわー。綺麗だね。たくさん妖精たちがいるね」
「そうなの!!みんな、スイたちの家族なんだよ?みんなもとは、精霊女王から生まれてきたんだから」
スイは、めちゃくちゃ誇らしそうにしている。
しかし、本当に誘惑の森は綺麗で、びっくりするくらい。精霊たちの光と、かわいい妖精達、豊かな自然が、めちゃくちゃ絵になる。
「あ、やばっ」
前のめりになってみていたせいで、手が滑ってしまったのだ。そのまま私は下まで落下。
「痛っ」
「うげっ」
しかし、そこまで衝撃はこなかった。なんでだろう?と思ったら、
「おい!!お前!!今すぐ殿下から離れろ!!!!」
「え?殿下?」
金色の髪に、青色の目。超イケメンで、気品が溢れている男の子。
そう、私は、
「誠に申し訳ございませんでした!」
私は綺麗に90度まで腰を曲げて、最敬礼を取る。
「いやいや、気にしないで。どうせ、治癒魔法でなんとでもなるし、そこまで痛くなかったし。それより、君は大丈夫?」
はっ。となった。みられたのだ、この髪の色と、瞳の色を。しかし、彼は、私の心配をしてくれている。なんて優しい人だろう!!
「いえ、私は大丈夫です」
これ以上、ラファエルといると、やばい。「私が幸せになる計画」その大前提が、婚約者に選ばれない、ということだからだ。
「では、私はこの辺で、失礼します」
さっさと退散しようと思ったのだが、
「ねえ、待って」
なぜ!
「はい?」
超愛想笑いで振り返る。
「ねえ、君は、あんなところで何していたの?」
「貴方様には関係のないことですので。では、本当に失礼しまーす!!!!」
「え!?ちょっと!!待って__」
はい。私、逃げました。
バタンッ
「ミア!!」
「どうかいたしましたか?」
「今日さ、お屋敷に、誰か来る予定ある?」
「?ありますが」
「誰が?」
「王太子、ラファエル様ですが」
まじか。そう、今日が、ソフィアがラファエルに一目惚れされた日だったのだ。
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