第2話  空港泊でテロ??に遭う

 日本と韓国の間には時差はない。定刻より少し早い14時前に、仁川国際空港第2旅客ターミナルに到着した。すぐにトランジットエリアへ向かう。保安員の日本語が日本人よりうまく、スムーズに荷物チェックなどを済ませることができた。

 トランジットエリアには、シャワールームもある。行程上、明日シャワーを浴びることができない私は、ここで浴びておくことにした。トランジットの時間は4時間もある。先に浴びてから、ラウンジに向かい軽食を取ることにしよう。

  仁川空港のシャワーはバスタオル、ボディソープもついて無料で使用できる。そしてシャワーブース内には日本語表記もある優しさまである。ブースも多く、常にクリーンスタッフも稼働しており清潔そのものだった。日本の空港は有料施設ばかりであり、このようなサービス点は後れを取っているなといつも感じる。

 このターミナルには、プライオリティパスが使用できるラウンジが3つある。強欲な私は全て制覇することにした。ラウンジをはしごすることによって、旅モードに加速度を付けようと試みた。

 どのラウンジもWi-Fiも整っているし、仮眠が取れる長椅子が設置してあったりと、サービス面では申し分がない。料理の方も韓国料理をベースに、5つ星レストランのレストランの朝食ビュッフェに匹敵するくらいに豪勢であり、中国のラウンジも見習ってほしいと思ったほど。

 3か所全て制覇し、げっぷする頃には、搭乗口集合時間も迫っていた。3か所目、Lラウンジのブログ用の写真を取り終えた後、私は搭乗口へ急いだ。

 18時15分、大韓航空は定刻出発をしてくれた。当たり前のことではあるが、日頃から中国系の航空会社を愛用している身にとっては感涙ものの出来事である。

 座席はフロントシート席だった。前方座席後ろにモニターが付いているのではなく、横から出してくるパターンだった。出し方が分からず、もたもたしていたら、隣に座っていた親切な韓国人が助けてくれた。

 離陸後、1時間ほどして機内食が配られた。しかし配られたものは、大韓航空名物のビビンバではなかった。正直なところ私は、ビビンバが食べたくて大韓航空をチョイスしているようなところがある。大韓航空金沢支店に行って、マイルの手続きをした際に、機内食はビビンバではないことをあらかじめ聞いていたものの、万が一の望みを持ち、搭乗した部分もあっただけに、やはり軽い落胆はあった。

 給食レベル以下の表情のないチキンソテーは、食べる気にもならず、デザートで配られたアイスクリームだけ胃袋に押し込んだ。もちろん搭乗する前に、ラウンジ巡りでたらふく食べていたこともあったが、それでもビビンバを胃袋に入れる気合は十分だった。この時私はようやく、旅モードに入っている自分に気が付いた。

 予定より随分と早い、現地時刻21時台に、ヤンゴン国際空港に到着した。しかしイミグレーションが死にかけの亀のようにとろく、また預け荷物が出てくるのも遅かったため、到着口に出たのは23時10分前だった。

 急いで両替に走った。ちなみに両替所は、到着口前の店しか、この時間だと開いていない。他に2か所ほど、チケットカウンター方面にあるのだが、夜は営業していなかった。ATMで現金を引き出す方法も知っているのだが、旅仲間が他国でカードを吸い込まれたという経験をしており、そのエピソードを聞いてから試したことはない。

 ミャンマーでは日本円が両替できないため。日本から900ドルを持参し、400ドルのみ両替した。400ドル=61万4000チャット(ミャンマー通貨単位。1円=15チャットくらい)。ものすごい札束になり、財布に入りきらなかったため、リュックにそのまま突っ込んだ。

 後日談になるが、全てミャンマーでチャットに両替しなくてよかったと思った。ドルしか使用できない施設もあるし、ドルを欲しがる施設も多かったからだ。

 日本に持ち帰ったドルは、378ドル。ドルでホテル代を払ったりもしたから多少減った。ドルは持ち帰っても次の国で使えるが、チャットはミャンマーでしか使用できないからゴミである。だからチャットは十分に計算したうえで両替した方がいい。

 明日は朝4時30分に空港を出て、アウンミンガラーバスターミナルへ向かわなければならない。5時30分発の高速バスに乗って、ゴールデンロックがあるチャイティーヨーヘ向かうためだ。たった3時間程度の睡眠のために、宿を手配することに関して無駄を感じた私は、この日初めての空港泊を決行した。

 ある程度覚悟は決まっていたものの、思った以上に眠れない。

 寒いし、何よりもうるさい。あとびっくりしたのは翌朝0時30分頃だったと思われるが、突然爆音が鳴り響いたのだ。

 テロか??と思い、飛び起きて周囲を見渡すと、空間が全て白くなっていた。爆弾

でも爆発したのかと、1人パニックになっていたら空港スタッフに、

「大丈夫だから、もう少しで終わるから、安心して。」

と簡易な英単語を並べて制止された。

 説明を聞くと、ミャンマー空港では毎日深夜に、業務用の殺虫剤を散布しているのだという。それだけ虫が多いのだろう。国際空港と言う名称ではあったが、当然ながら、施設そのものは日本の地方空港より劣る感じは否めず、やる気も感じられなかった。業務用殺虫剤のマシンの音は止むことはなく、私は睡眠を諦めざるを得なかった。


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