004 再婚

【 辺境伯アレックス・ヴィンサンダーside 】


 家宰のアダムが連れてきた後妻のオリビア。若く見栄えも悪くない、自信家の女だった。

 亡くなった前妻のセーラは、病がちで何事につけ控えめだったのとは真逆である。

 酒を好んで飲むオリビアは、時に饒舌に語った。


 「ショーン様の養育はわたくしにお任せ下さいまし」


 オリビアの時折り見せる目つきの鋭さが気にはなったが、家宰のアダム曰く、長くこの地にある没落男爵家ならではの生活の辛さ所以だという。

 長い戦乱を越え、わが王国、わがヴィンサンダー家に下ったというオリビアの男爵家。オリビア以外の者は戦火に消えたという。

 さぞや辛苦を舐めたことであろう。


 忙しい私に替わり、今はショーンの養育を第一に任せたい。早く弟か妹が産まれれば良いのだが。



 ショーンは、目元がセーラによく似た優しさがある子だ。強く逞しく、それでいて民に優しい男として次代のわがヴィンサンダー家を背負う明るい男に育ってほしいと思う。

 オリビアにはそのしっかりとした養育を望む。


 オリビアは息子を「ショーン様」と呼ぶが、後妻とはいえ家族となったのだから呼び捨てで良いというのだが…。


 セーラが亡くなって以来、私も体調が優れない。

 まだ幼いショーンのためにも、そして領地領民のためにも私ががんばらねば。



 辺境伯と呼ばれるアレックス・ヴィンサンダー。最愛の妻の死と愛する息子の誕生を一度に味わった日より。

 運命の歯車が悪い方向に廻り始めていることに気がつかないでいるのだった。



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