満点パパ

ひぐらし ちまよったか

好かれる

 パパは「神さんに好かれとるんや」と言う。


 実際、パパと街を歩いていると「本当だ」と、実感できる事が有る。


 パパは信号機に停められない。


 目的地まで歩いているが急ぎ足になるでもなく、タイミングを見計らって、ゆっくりとした歩調になるでもなく、普通に話しながら歩いていても、行く先々で歩行者信号は青い色だ。


「歩きやすいね」

「そうやね」


 目標の映画館には、思ったよりも早く着きそうだ。


「お?」


 突然パパが道を変えた。まっすぐ行くべきを左へ曲がった。


「あれ? そっちは違うよ?」


 すると後ろの方から、救急車の近づいてくるサイレンが聞こえてきた。


 目の前の信号機は、当然の青。

 救急車は赤信号の交差点を通過することなく、私たちを追い越していった。



「ときどき、こういう回り道も、ええ」


「そうだね」


 パパは、満点だ。

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