鬼  2





一角と千角は巨大な玉を針で持ち上げた。

そして鈎針が上に突き抜ける。

二人は玉の上部に飛び、一気に針を抜いた。


すると玉は一瞬にして糸に通り、沢山の玉に分かれた。


ったり!ひゃくはちたま逆数珠玉ぎゃくじゅずだま!」


一角が叫んで素早く糸を結んだ。

糸は玉の数に合わせてちゃんと伸びていた。


そして千角がそれに向かって金棒を打ち下ろした。

すると逆数珠は数が半分ずつの二連になった。

それぞれかなりの大きさだ。


「じいちゃん、数珠が二つになった。」

「どうするんだ、あいつら。」


一角と千角がその数珠を素早く体に巻く。


そして二人はにやりと笑うと、

その体が見上げる程の大きさになった。


しろ作務衣さむえの皆はただぽかんと見るだけしか出来なかった。


まさに彼らは鬼だった。

地響きを立てながら歩き出し、何かを探していた。


そして一つの穴を見つけた。


彼らはそれを見降ろす。


そこには彼らの住むべき鬼界きかいがあった。


この穴で現世と鬼界は繋がっていたのだ。

その中心にあったのはこの赤い玉だ。

赤い玉の力で現世と鬼界を繋ぎ、

それぞれに破壊を放とうとしていたのだ。


鬼が唸り出す。

腹の底に響く音だ。

人にとっては耐えられないほどの不快な音だ。


巨大になった一角と千角は穴の上で飛び上がった。

凄まじい地響きとともに足を降ろす。

何度飛び上っただろうか。

砂煙が立ち、周りはほとんど見えなくなった。

そしてそれが収まると穴はふさがっていた。


一角と千角が身に付けていた玉は光を無くし、

一瞬ではじけ飛んだ。


しばらくして皆が顔を上げた時には一角と千角の姿は無く、

瓦礫と化した紫垣製菓しかなかった。


音が無くなったように何も聞こえない。


無音の空間に雲間から月の光が差す。

白く清らかな光だ。


光の中に一人の男が倒れていた。

そこに女性が駆け寄る。

犬も走る。

豆太郎もはっと気が付き走って行った。


遠くで何台ものパトカーや消防のサイレン音が聞こえて来た。


誰かが通報したのだろう。






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