異様な会社  2




紫垣製菓のアポイントメントはすぐに取れた。


「元々取引があったから話は早かったよ。11時からだ。」

「そうか、無理はするなよ、今日は偵察だからな。」


金剛がゆかりに一寸法師のスタッフジャンパーを渡した。


「紫さん、これを着て下さい。それとこれ。」


ジャンパーと一緒に彼は数珠のブレスレットを渡した。


「魔除けです。助けにはなると思う。」

「ありがとうございます。」


透明な玉の数珠だ。


「あの金剛さん。」

「なんだね。」

「昨日、私には加護がついているとおっしゃっていましたが……。」


金剛がふっと笑う。


「実はね、私は君のお父さんから娘さんの話をよく聞いていたんだよ。

君がどうして家を出たかの理由もね。」

「勘当されたことも、ですか。」

「ああ、その後お父さんがどうしているか知っているかい。」


紫は複雑な顔をする。


「お父さんは毎日君のために祈っている。

邪悪から身を守るためにね。」

「えっ。」


紫は驚いた。


「そう言えば桃介が紫さんは神官の匂いがすると言っていたけど。」

「そうだよ、それだよ。

紫さんは気が付いていないだろうけど、

お父さんはずっと君を見守っているんだよ。」


金剛の声は優しかった。

紫は近くの椅子に座り俯いた。


「自分が構ってやれなかったからこうなったと言っていたよ。

あと、自分が出来るのはこれしかないとも。

私達はね、こういう仕事で命を張っているからか、

どうしても不器用になってしまうんだよ。」


紫の膝に涙が落ちる。


「ここであったのも何かの縁だ。

今のこの騒ぎが収まったらお父さんに連絡してごらん。

もう一度素直に謝るんだよ。」


紫は顔を上げた。


「ありがとうございます。そうします。」


金剛はにっこりと笑った。


「なあ、じいちゃん。」


豆太郎は横目で金剛を見る。


「俺には数珠は無いのか。」

「お前は守護がバリバリに効いているから

よほどの事が無い限り何ともないはずだ。

第一それが強すぎるから多分赤い玉が見えないのだと思う。

強すぎる加護も困りものだな。」

「ちぇっ。」


金剛は豪快に笑う。

それにつられて紫も笑った。


「と言う事で紫さん、今日は頼むな。

何かあれば俺が守ってやるよ。」


豆太郎が言う。


「はい、私も出来る限り力になります。」


少しばかり赤い目だが紫も笑った。








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