エピローグ

 季節は秋。

 ちょうど大学では文化祭が開催されており、学生のみならず地域の一般人までもが大学に集まっている。

 そんな喧騒で満ちた大学内で、 一人の少女が図書館に足を踏み入れた。

 来年この大学に通うことになる彼女は、大学の文化祭がてらこの大学を訪れたのである。

 図書館に入ると、人の息づかいが間近に聞こえる喧騒が嘘のように、水の中にいるような静けさが彼女を包み込んだ。

 慣れない人だかりにつかれた彼女は、ほっと息をつく。

 少し休憩しよう。

 ゆったりできる場所を求めて、彼女は奥へ奥へと足を進めていく。

 まるで何者かに導かれるように。

 そして誰もいない図書館の最奥で足を止める。

 そこにはゆったりとした肘掛椅子に、彼女がすっぽり収まるくらいの大きさの鏡があった。

 そして彼と出会った。

 鏡の中で本を片手にもの憂げにたたずむ青年と。

「どうして鏡の中にいるの?」

 彼女は聞いた。

「彼女を待っているのさ。ずっと、ずっとね…」

 鏡の青年はどこか遠くを眺めながら答える。

 彼のその瞳は遠い星空をなんとなく眺めるような、もの悲しさを秘めていた。

 少女は彼の愁いを秘めたその瞳から目が離せない。

 鏡の青年を前にして、少女は自身の中で熱く燃えあがる何かが花開いたのを感じた。


 こうして幽霊と生徒の恋は連綿と繰り返されるのだった。


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