Happy Halloween 2022

平 遊

プロローグ

「ハッピーハロウィン、太陽たいよう!」


 部屋のドアが開くと同時に、狭いワンルームに響く元気な声。


「・・・・はいはい。お菓子なら用意してあるから、ちょっと待っててね」

「お菓子って・・・・いつまでも子供扱いしないでよっ!」

「そんな訳じゃないけ・・・・ちょっ!なんて格好してるのっ!肌見せ過ぎだよ、月菜つきなっ!ダメでしょっ、若い女の子がそんな格好で外ウロウロしてたら・・・・」


 デスクに向かっていた太陽は、振り返った月菜を目にするなり、慌ててハンガーにかけてあったシャツを取り、月菜の肩に羽織らせる。


「私ももう25だしさ。こんな格好が許されるのも、今年が最後かなって思って」


 そう言った月菜が着ているのは、肩口が大きく開き、胸元が強調された、ミニワンピの魔女の衣装。


「あのねぇ、月菜。ハロウィンていうのは、そもそもコスプレ祭りじゃ」

「はいはい、それ毎年聞いてる。でも日本ではもはやコスプレ祭りなのよ。いいじゃない、楽しんだって」

「はいはい」


 軽くため息を吐くと、太陽は再びデスクに向かった。


「あとちょっとで終わるから。そうしたら・・・・」

「あ、じゃあ私、温めておくね、おかず。あー、スープも作ってある!これも火に掛けて・・・・あーっ!ハロウィンケーキ見っけ!かっわいい~、ナイス太陽♪」


 狭いキッチンや冷蔵庫の中をあちこち見ながら、一人賑やかに食事の準備を始める月菜に、太陽は小さく笑いを漏らす。

 チラリと太陽が視線を向けたのは、デスクの一番下の引き出し。

 ひとつ大きく深呼吸をすると、太陽は仕事の仕上げに取り掛かった。

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