第17話雨の日の部活

なんと言えばいいのかこれが近年若い者共が言っている‘ギャップ萌え’というやつなのだろうか?

さっきまであんなにイキイキと俺をおもちゃにしていた澤田が完全に硬直している。


「....いや、その別に無理にとは言わないよ....ごめんね」


口ではそう言っているがめちゃめちゃ悲しそうだった。


「飛鳥ー!!」


さっきまで俺の後ろにいた澤田が一瞬にして九条に抱きついていた。


「ちょ?.....え?...やm....」


そのままの流れでもみくちゃにされる飛鳥を気の毒に思いつつ、おそらく俺と同じ感想を持っているであろう2人と顔を見合わせて


「......じゃあ俺たちは部活行くから」


逃げることにした。


「なあ悠、俺たちは後ろから聞こえてくる悲鳴には聞き覚えはないよな?」


「うんそうだね、知らない人たちだよ」


俺たちは遠い目をしながら部室へと向かうのであった。



「こんにちはー!」


3人で弓道場に着くといつもより遅くなってしまったので(理由はわからないが)既に何人か先輩が来ていた。


「雨の日の部活ってどうなりますか?」


弓の弦を張っていた轟先輩に悠が聞くと先輩は一瞬固まって


「あれ?俺グループに今日の流れ送らなかったっけ?」


そう言って張り終わった弓を置いて部室に戻る轟先輩。

しばらくすると少し落ち込んだ轟先輩が出てきて、


「悪い昨晩グループに送ったつもりが送信出来てなかった。雨の日は外で練習できないからグループごとに弓道場で看取り稽古と空き教室で徒手練か筋トレのつもりだったんだけど.....」


どうやら轟先輩のミスらしい。

でもおそらく全員一回弓道場に集まると思うので実害は無いだろう。


「いや!大丈夫ですよ取り敢えず前のホワイトボードにきょうのながれをかいておきましょう」


俺が提案すると轟先輩は頷いて弓道場の中央の壁にあるホワイトボードに一年生用の今日の流れを書き始めた。


「こんにちはー」


どうやら澤田達も来たようだ。

轟先輩から受けた説明をもう一度する。


「なるほどねー私たちは最初看取り稽古かな?」


それから10分もしないうちに全員集まり挨拶を終える。


「じゃあ前に書いてある通りAチームは空き教室で筋トレと徒手練、Bチームはここで看取り稽古ね」


最後に副部長がそう言ったのでAチームの奴らは弓道場を出ていく。

俺たちはBチームなので弓道場に残り隅の方で正座して並んだ。


「始め!!」


射場に並んだA立の先輩たちが一斉に弓を構える。

そして一番前の先輩、轟先輩が弓に矢をつがえて弦を引き絞る。


シュッ...パンッ


勢いよく飛び出した矢は的の中心近くに刺さる。

そして後ろの先輩(確か三年生)が同じ動作を繰り返す。

轟先輩よりもやや短い会の後放たれた矢は的の隅に中る。

真ん中に立っている先輩も弓を上げる。

引分けが特徴的で右肘が背中側に引き寄せられるようだった。

そして放たれた矢は的に中る。

どうやら新しい的だったらしく音が良い。

それでも先輩達は表情一つ変えずに淡々と引いていく。

4番目に弓を起こしたのは淳先輩だった。

しっかりとした動きで弓を引く。

若干手が震えているように見えるが会を持つうちにそれも小さくなっていき....中った。

そして最後の先輩が弓を起こす。

今のところ全員中てているのでこれを中てれば全員的中だ。

そのプレッシャーの中その先輩は淳先輩のように震えることなく機械のように身体を動かす。

そして........






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