第4話部活動見学1

学力テストについてはもう考えない。

高校入っても勉強は続くぞと言っていた中学の担任の言葉を思い出していた。

まさか入学の次の日にいきなりテストとか予想できるわけが無かった。

内容は事前に渡された春課題の中から出ていたのでそこそこ取れていたとは思うが流石は進学校だと思った。

そんな感じで今のところ高校に入ってから俺は誰とも喋っていないまだ3日目だがこれはちょっとやばいんじゃないかと思い始めた。

そもそも俺の左右は周りに同じ中学のやつがいたらしくそうつらと話しているし前後は女子なので話しかけられないという状況なので実質俺に非はない。

そんな言い訳を自分に対してしながら廊下に貼られた部活の宣伝ポスターを見る。

そこにはバスケ部やサッカー部などの部員募集の文字があり勿論テニスの文字もあった。

しかし俺の目はテニスではなくその横の弓道部の文字に吸い寄せられていた。

あの日から半年いまだに脳裏に焼き付いて離れないあの音と光景。

無意識のうちに俺の足はこの迷路のような学校の隅にある弓道場へと向かっていた。



弓道場と書かれた札のついた扉の前で弓弦は一瞬立ち止まる。

すると


「おー新入生きてるじゃん!」


後ろからの声に振り返って見ると弓弦より僅かに高い位置からこちらを見る男子生徒の姿があった。


「にしても早いねーまだ先輩たちも来てないし俺いつも一番乗りなのに........見学だよな?準備に少し時間かかるけど取り敢えず入ろうぜ」


ちらっと制服のクラスバッジを見るとどうやら2年生のようだった。


「ありがとうございます。先輩のお名前を聞いてもいいですか?」


つい一年前までは最高学年だったのにここでは一年生か...と不思議な気分になりながら尋ねる。


「俺は弓道部副部長2年荻原淳だ。まだ入部するかはわからないけど同じ学校の生徒としてよろしくな」


そう言って手を出してくる先輩に俺は好感を抱きながら手を出す。


「俺は神宮寺弓弦ですよろしくお願いします」


そう言って先輩の手を握ると先輩は笑って俺と繋いだ手を振り空いた手で肩を叩く。


「弓弦かーおい弓道部入ろうぜ?」


軽く言う先輩に苦笑しながら言葉を返そうとすると向こうから近づいてくる人影が見えた。


「淳そんなところで何してんの?」


そう声をかけたのは淳先輩と同じ2年生のバッジをつけた女子生徒おそらく弓道部の先輩だろう。


「いやー見学に来てくれた子に挨拶をと思ってなー」


淳先輩が俺の手を離しつつ後ろを振り向き返事を返す。

すると女子の先輩が驚いたようにこちらを見る。


「え?もう来たの?早いね、私は弓道部2年鈴宮朱莉よ朱莉先輩って呼んでね」


明るくそう言う朱莉先輩。


「俺は一年の神宮寺弓弦ですよろしくお願いします」


俺はもう一度自己紹介すると朱莉先輩はにこりと笑って淳先輩の方を見ると


「せっかく早く来てくれたんだし準備するとこから見る?」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る