午前0時のシンデレラ
古河奈桜
第1話
「…と、こんなもんでいいだろ。何か意見のある奴はいるか?」
不遜な物言いで周りの生徒に賛成を求めるのは、生徒会長の宝条颯(ほうじょう はやて)その人だった。颯の金髪ブロンドの髪は陽の光を浴びてキラキラと輝いている。キリッとした左の目元には泣きぼくろが存在し、制服を着ていなければ学生だとは思えないほどの色気が溢れている。
そして、その颯の偉そうな態度を特に指摘することも無く、その場に集まった面々は賛同の意を表す。
「なら、今年度の予算案はこんなもんか。各部長には部長会で資料を配布して伝える。資料作成は美作、お前に頼むぞ。」
「えぇー!僕ぅー!?やだよ資料作成とか地味だしつまんない!!山田にやらせたらいいじゃーん!!」
「そうやっていっつも俺に仕事回すのやめて下さい。俺だって暇じゃないんです。」
「だ、そうだぞ。」
「なんなのさー!庶務のくせに生意気だぞ山田ー!!」
「はいはい。先輩はうるさいですよ。」
「きー!!」
バタバタと駄々をこねるのは書記の美作遥(みまさか はるか)。ふわふわのブロンドヘアーは染めた訳ではなく、イギリス人の祖父からの遺伝らしい。くりくりしたアーモンド型の目は長いまつ毛で縁取られ、桜色の唇とともに女の子の憧れの的に違いない。
頬を膨らませて不満を伝える仕草も遥なら違和感を与えないほどだ。
それに呆れた目を向けているのは庶務の山田仁(やまだ じん)。2年生ながら生徒会に任命された将来有望な生徒である。見た目は颯や遥と比べると地味な方で真っ黒な髪に適度に着崩した制服とザ・高校生という出で立ちだ。
その他にはこの生徒会には、会計に松井真治(まつい しんじ)が在職している。真治は短髪で硬派な印象を受ける剣道男子だ。切れ長の瞳は和服とよく似合うようで、実際、真治が道着を着ると見学に来ていたファンが一斉に写真を撮って、別アングルを撮った子達と写真を交換する姿が体育館外で見られるらしい。
本人は写真を撮られることには慣れているようで、悪用するわけで無ければ好きにして構わないと言ったそうだ。
そして、最後は僕、この蒼明館学園の生徒会で副会長を務めている柳真澄(やなぎ ますみ)だ。チタンフレームのメガネに襟足までの長さの黒髪、小学校の時には「もやし」と呼ばれた体の線の細さからして、この生徒会の中では1番目立たない人物である。
仕事としても、会長の仕事の補佐をよくするので、見る人によっては僕の方が庶務っぽく感じられるだろう。
以上5名がこの全寮制男子校、蒼明館学園の高等部の生徒会執行部である。
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