価値観は人それぞれ

サキに誘われ、学校帰り駄菓子屋に寄った。

「高木くん、知ってるよね?」

「知ってるよ。クニと仲良いから、一緒にちょこっと家に行った事ある」

「カナがさ~何かあったみたい‥それで元気ないみたいなんだよね」

「高木くんか~あの人‥天然タラシじゃん?」

「この間の集会で、たまたま会って遊んだんだよね。そん時、何かあったっぽい」

高木くんは、瀬戸の学校の一個上で色んな意味で有名だ。何とも言えない色気があり、歩いた後に、花が咲いている様な人だ。フワッとパーマでモデルの様にスラッとして背も高い。クニいわく、あの人に近寄ると妊娠するぞ。と言わせる位、複数の女子を愛せる様だ。だけど不思議な事に、誰一人、高木くんを悪く言う人はいない。

「また、そんなもん食ってんのか」

タイミング良く、クニと江口達が通りかかった。

「そういえば、聞いたか?小川達の事」

「知らない。何かしたの?」

小川は、瀬戸の学校のタメだ。

「あいつら、車、盗んで電車に突っ込んだらしいぞ」

「はあ?」

「電車、止めたから、何百万も取られるらしいぞ。十分いくらだったかな?親が、金持ってるから大丈夫だろ」

「バカじゃないの?そういう問題じゃないでしょ」

「それより問題なのが、ヤバい所から盗んだらしいんだよ。あいつらバカだろ」

小川達は、鍵など無くても原チャリなんかは、直結だかで簡単に盗んでしまう。そのクセ、自分の自転車を乗って行かれそうになり、追いかけて飛び蹴りをくらわしボコボコにしたと聞いた。とうとう車にまで手を出したか‥というのが本音だった。

「そうだ。高木くんてさ~今、彼女いんの?」

「何でだよ。高木くんは思ってなくても、彼女だって思ってる女はいんじゃねぇの」

「やっぱ、そんな感じか‥」

「ほんと、いい人だけどな。男にも普通に優しいし‥女にだけ特別って訳でもないんだけど‥カッコいいからな~俺と同じくらい」

「おいおいおい‥めでたいね。あんたも」

そこにいた皆が笑った。クニも笑っていた。

「高木くんと、何かあったのかよ」

あたしはチラリとサキを見た。

「カナが、高木くんに誘われて‥悩んでるみたい‥」

「ああ‥気にする事ねぇよ。あの人、誰にでもそんなんだから‥何なら忘れてる可能性もあるぜ。タチ悪いのは、一切悪気ないからね。女がその気になんなきゃ襲うような人じゃないから、そこは安心しろ。女次第だな」

「風の様な人だね。心地いいけど掴めないみたいな」

「竜巻かもしんねぇけどな」

「確かに‥それだけの破壊力あるわ~フェロモンだだ漏れだもん。近寄ったら、避けて通るのは難しいかもね」

「ただ、遊ぶ分には楽しい人だからな。優しいし」

「あんたもさ~今は知らないけど、時々、付き合ってない子とするでしょ?どんな気持ちなの?」

「バカお前、無理やりした事ねぇぞ」

「当たり前だよ」

「お前は何にも知らねぇんだよ。女から誘ってくんの‥やってやんなきゃ失礼だろ」

クニ達はニヤニヤ笑った。

「この間、江口、電車で痴女にあったんだぞ」

「痴女?何それ?」

江口を見たら、ニヤニヤと笑って下を向いている。クニが続けて話した。

「電車のドアの横に立って本読んでたら、息子を手に乗せられたんだってよ」

ギャハハハ‥皆、笑い出した。

「そのままジッとしてたら、おっさんがツカツカって来て、やめなさい。はしたないって言ったんだって」

ヒーヒー笑いながら、声にならない様な声で言った。

「さすがに、そんな女は無理だぞ」

「あんたが、された訳じゃないでしょ。向こうも選んでるわ」

「お前ね~まぁ、お前にはわかんねぇよ」

「あぁ‥でも何となく分かるかも」

「分かんじゃねぇよ。バカかお前」

「何、ムキになってんの?」 

「なってねぇわ」

「んじゃ、帰るわ」

「何かあったら言えよ」

クニ達と別れ、サキと二人で帰った。

「ぶっちゃけ、ゆうならどうする?」

「あたしは‥武器があるのに、むやみに使わない人に魅力を感じるから‥高木くんは‥ないわ」

「どういう事?」

「どんなに綺麗な花でも、共有する花なら興味ないかな~自分だけの花じゃなきゃ、愛情注ぐ気になれないな」

「アハハ‥ややこしい。でも、なんか言いたい事は分かる」

「注目される人は、何かと言われるのよ。だから本当に好きなら、噂には惑わされて欲しくないな。自分が見て感じた事が全てだと思う。人がなんて言おうと、自分が幸せだと思えればいいと思うからさ」

「そうだよね。カナ次第だね」

「また何かあったら、一緒に考えよ」

価値観は人それぞれ‥



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