ピアス

夜、サキから電話がかかってきた。

「ゆうにお願いあんだよね。今から行ってもいい?よっことクミも一緒にいるんだけど‥」

「どうしたの?」

「家でもいいんだけどさ~姉ちゃんの友達来てて、うるさいの嫌でしょ?」

サキの家は父子家庭で、親が不在の事が多く人がよく集まっていた。

「親、夜中には帰って来るから、それまでだったらいいよ」

また何か思いついたのかな?何かする時は何故だかいつも、あたしを誘ってくる。

制服直す時も、カバンをつぶす時も‥

知らない情報を教えてくれる。

「んで?何すんの?」

「これ‥」

サキは手に持った小さなイヤリングを見せた。

「ピアス開けない?ゆうやって。あたしの」

「あっ‥ピアスか。どうやんの?教えてくれたらいいよ」

「みんなビビって出来ないの」

あたしの耳元で囁くとイタズラに笑った。

「まずは氷ある?」

手順は簡単だった。

「どぉ?感覚なくなった?」

耳たぶを氷で冷やしているサキに聞いた。

「うん。だいぶ」

「んじゃやるよ。どの辺?」

「ゆうに任す」

「んじゃ適当に真ん中辺りに刺すよ」

安全ピンをライターの火で炙った。

他の二人は固唾を呑んで見守っている。

「痛かったら言いなよ」

そのままズブリと安全ピンを突き刺した。

「痛い?大丈夫?」

「うん」

感覚が戻る前に貫通してあげなければと必死だった。グリグリグリ…

やがて‥無事、貫通した。

「おお~」

歓声が上がった。

プルルル…

「ちょっと、そのまま待ってて」

電話に出ると田所くんだった。

「何してるの?」

「今ね~友達のピアス開けてた」

「えっ?ピアス?俺も開けようかな~ゆうは?」

「開けるつもり」

皆に誰から~?と聞かれ田所くんと答えると、よっこが話したいと寄って来た。

「今ね~ピアス開けてる途中なの‥よっこが話したいって言うから…少し代わるね」

「また電話するよ」

よっこに代わりサキの所に戻った。

安全ピンを抜いてピアスを入れようとしたけど、なかなか入らない。自分の耳じゃないから痛さが分からず加減が分からない。

「一気にいっていいよ」

サキに言われ、グリグリとピアスを入れた。

ズブッ…ようやくピアスが入った。

「やった~」

サキとハイタッチした。

「田所くんて、あんま話さないんだね。また電話するって言ってたよ」

よっこは、つまらなそうに言った。

田所くんはあたしを驚かす天才だけどね。

心の中でつぶやいた‥

よっこもピアスを開けたいと言うから、開けてあげようとしたけど、痛い痛いと言うから怖くなって止めた。

「ゆうも開けるでしょ?」

「ピアス買ってから自分で開けるわ」

地元のタメが集まる空き地に、サキが行くと言うから送りがてら皆で行った。

「あれ?お前どうしたんだよ。珍しいな」

クニが話かけてきた。

「飲むか?」

何やら缶を差し出した。

「何?これ」

暗くて、よく見えないけどジュースじゃないみたいだ。

「幸せのお水」

ギャハハハ…言い方が可笑しくてツボに入った

「何それ…怪しすぎる」

「俺といる時は飲んでもいいぞ」

「絶対にいらない」

「お前はよ~もう帰りなさいよ」

「あんたはさ~いつも帰れ帰れってうるさいんだよ。言われなくても帰るよ」

サキ達は、まだいると言うからそのまま帰った。

早くピアス開けよう。ワクワクしていた。

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