ともだち

MINANA

里穂

「聞いて、まじやばい。推しの新曲がやばいほんとかっこいい!まじ見て???」


私は隣を歩く里穂にスマホの画面を見せた。別に里穂はこのグループのファンじゃないけど、とりあえず誰かに共有したくて。


「え、ほんとだ!かっこいい」


言うと思った。


「ほんとさーもう顔も曲もダンスも全部ガチかっこいい!!ガチ昨日公開だったんだけどさ?ずっと聞いてるんだよね〜」


「へぇー、そうなんだ」


言うと思った。


部活からの帰り道、駅まで20分の道のりで私はひたすら喋り続けた。里穂は時々相槌をうつくらいで、私の話を聞き続けている。


初めて会った時から、里穂とは合わないな、って感じていた。


天然でマイペース。趣味とか感覚とかが基本的に私と全然違う。


部活に途中入部して一緒にいるようになってからかれこれ1年経つが、私は里穂のことをあまり知らない。知ってるのはポケモンが昔から好きってことくらい。


里穂もきっと思ってるだろう。こいつの話面白くねぇなって。何が面白くてそんな話してくんだろうなって。


でも、しょうがない。私だって里穂の話を聞きたくなくて話っぱなしなわけじゃない。里穂が喋らないから、その空気感が気まずくて話し続けてるだけ。正直話す話題そろそろ尽きてきて困ってるくらい。


本当の友達は、沈黙になっても気まずくならない間柄らしい。

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