突然

 付き合い始めた高校1年生の文化祭。


 それから幸せな時間は足早に過ぎていき、いつの間にか湊斗達は2年生へとなっていた。


 遊園地、水族館、映画、それぞれの家などなど、この少ない時間で様々な所へ行き、様々なことをしてきた。


 気づけばもう夏。


 あと2ヶ月ほどで付き合ってから1年が経とうとしていた。そして明日は、湊斗にとっても大切な日だった。


 湊斗は自室の壁にかかるカレンダーを見やる。そこには、明日の日付に夢の誕生日と書かれている。


 カレンダーから手元に視線を落とし、誕生日プレゼントに触れる。


 なんだかんだ1週間も悩んで買ったプレゼント。


 形を崩さないよう、そっと机に置く。


 湊斗は椅子から立ち上がり、クローゼットを開け着替え始めた。


 夢の希望で、1番最初に「おめでとう」と言えることになったのだ。


 約束の時間までは余裕があるが、待っていられるだけ湊斗は余裕ではなかった。


 足早に約束の公園へと向かった。



「12時まであと2分、か……」


 約束の時間は11時50分。夢がこれまで遅刻することはたまにしかなく、5分を超える遅刻はしたことがなかった。


 どうしたのだろうと不安と心配する気持ちが湊斗の思考を埋め尽くす。


 とうとう針が12時を指した。日付が変わり、夢の誕生日となったのだ。


 針がてっぺんに到達した瞬間、静かな公園で電話の着信音が鳴り響く。


 とっさにそれを手に取り電話に出る。


「夢?! 何かあった…」


「もしもし、佐々木くんよね? 私は夢の母です」


「あ、え、夢のお母さん?! 失礼しました。どうかしましたか? それと、夢はどうして……」


 突然の夢の母親からの電話に、湊斗はテンパってしまった。


「これから言うことは落ち着いて聞いてちょうだいね。実は、夢は――交通事故にあったの」


「……………………え?」


 交通事故? いつ? どこで? 俺は何も知らな――。


 突然の展開に頭が追い付かず、湊斗はまともに返事ができなかった。


「夢が湊斗くんと会うんだって、さっき出かけて行って、その後警察から、電話が…来て……意識不明の……重体だって…………」


 夢の母親の声は次第に震えていき、本当のことだと無理矢理にでも思わせてくる。


「今夢は病院にいるらしいんだけど、佐々木くん……一緒に来る?」


「……はい。お願いします」


 湊斗は家にいる親に電話を入れ、夢の母親と父親が乗る車に拾ってもらった。3人大急ぎでその病院に向かう。


 しかしそこには――まだ温もりの残る、動かなくなった夢がいたのだった。


 この病院の医師が、現実を突きつけるように言う。


「――如月夢さんは、皆さんがご到着される少し前に息を引き取られました」

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