如月夢の恋 (Side 如月夢)

 中学を卒業し、私――如月夢は高校生となった。


 新しい3年間が始まり、知らない人が集まった新しいクラス。


 皆とはたぶん同じで、私にとっても殆どのものが新しいのだ。


 緊張と不安からか、その日は体が妙に重い。そんな重たい頭を支えるように頬杖をつき、ざわつく教室クラスを眺める。


 これ……絶対こっち見てるよね。


 隣の席になったある男の子が、何故か私をジッと見てくるのだ。


 少し不審に思うが、これからしばらく隣の席。なので、印象が悪くならないよう笑みを浮かべ話しかけた。


「どうしたの?」


 これが彼――佐々木湊斗との出会いである。



   ◇◇◇



 初めての席替えまで、私はよく佐々木くんと話すようになっていた。内容は本当に他愛のない話で、特に目的もなく話し、聞き、笑った。


 その日々が、私にとってはすごく楽しいものだった。


 席替えで席が離れても、私は積極的に話しかけた。


 佐々木くんは嫌な顔一つせず、隣の席だった時のように会話にたくさん付き合ってくれた。


 その時は、純粋に彼との会話を楽しんでいた。


 ある日、高校で新たにできた友達とトイレに行っていた時。


「夢ってさぁ……もしかして佐々木のこと好きなの?」


 友達の何気ない言葉。ただの興味だということは、彼女の顔を見ればわかった。


 その言葉を聞いた瞬間、何故か顔に熱が登る。頬をりんごのように真っ赤に染め、耳までも熱を帯びた。


 そんな私の姿は、鏡越しで自分の瞳に映る。そして、恥ずかしさから必死に顔を隠した。


 え……え!? 待って、なんで私顔真っ赤にしてるの?!


 佐々木くんは友達でしょ!? でも……。


 混乱する私の心臓は、周りの音が聞こえなくなりそうな程うるさく、全身に血液が巡る感覚が続いていた。


「夢、やっぱり佐々木のこと好きなんだ……。よし、なら友達である私が応援しよう! 可愛い夢のためだ、サポートとかも色々してあげる!」


 そう言い、彼女は熱くなった私に抱きついた。



 私は、佐々木くんが好き。



 そのことを自覚すると、心の何処かにあったモヤモヤが薄れたような気がした。


 しかし、心の中でそんなことを呟いてしまった私。


「夢!? 湯気出そうなほど赤くなってるよ? 大丈夫?」


 赤かった頬や耳は更に濃くなり、しばらくその熱が冷めることはなかったのだった。

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