第60話 ぬいぐるみだよ?

「「つ、疲れたぁ~」」


 2時間後、家の玄関を開けると、途端に倒れ込む俺と奏。

 一日中遊んだ上に、帰りは満員電車に揺られる。疲れている体に追い打ちを掛けられた。


「いやぁ~帰りでこんなに疲れるとは思ってなかったよぉ~」


 バッグを床に置くと、仰向けになる奏。


「あそこまでの満員電車は俺も生まれて初めてだ」


「今日はもうお風呂入って寝たいよぉ~」


「同感だ」


 と、俺達はガチガチになった体を動かすとリビングに向かう。


「零二くん、私お土産とか色々片付けてから入るから先にお風呂入ってていいよ」


「俺も友達の分とかあるから一緒にやるよ。それにその量を一人でやるのは無謀だろ」


 3袋分のお土産を帰り際買ったからな。

 これを仕分けるのは大変だろう。


「でも、2袋は全部家に置くぬいぐるみだよ?」


「残りの1袋にも相当な量入ってるだろ」


「半分は家で食べるお菓子だよ~。でも、手伝ってもらおうかな?」


「まかせろ」


 ソファーに座ると、袋の中身をテーブルに出して仕分け作業を開始する。

 大量に買ったクッキーやらチョコを、別でもらった小分け袋に詰め込む。

 流石に買い過ぎたな。今日だけで高校生の一か月のバイト代くらいは散財しただろう。


 今月は節約しないと。


「ホントに、分けても半分くらい残るんだな」


 一通り仕分けを終えると、残ったお菓子を眺めながら俺は呟く。


「ホントだね~、もっと抑えとけばよかった」


「まだ家にお菓子のストックあるのにな」


「どうせ全部食べるから変わりはないよ~」


「2………1ヵ月は持つな」


「かな~?」


 多分、この量でも2週間くらいでぺろりと食べ終えてしまうだろう。

 この前スーパーで買ったお菓子も2週間ほどでなくなって追加で買いに行ったし。


「じゃ、私はお菓子の整理とかしておくからお風呂いいよ~」


 棚からお菓子用のボックスを取り出すと、買ったももを入れながら言う。


「分かった、すぐ上がるから待っててな」


「ゆっくり入ってきていいからね~」


「なら、待ってる間寝室にぬいぐるみ達と写真とかを飾れば?」


「それいいね!」


「奏好みにレイアウトしていいぞ」


「え!?いいの!?」


 背中を向けていた奏は、目をキラキラさせながらこちらを向く。


「どうぞお好きにやっちゃってくださいな」


「やったぁ~!なら早く片付けてお部屋をぬいぐるみだらけにしよぉ!」


 高速でお菓子の片付けを終えると、袋から溢れるぬいぐるみ達を抱きかかえながら寝室へと入って行く奏。

 その後ろ姿を見ながら、俺も洗面所へ向かった。

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