第57話 いいベンチが!

「夜になるとちょっとだけ空いてていいね~」


 時間は経ち、アトラクションを乗り終えた俺達は、ゆっくりとご飯を食べたあと、パーク内の散歩をしていた。


 ご飯なのだが、奏は有言実行してレストラン内の全てのメニューを食べ尽くした。

 本当にすごいあの胃袋。その食べっぷりに周囲のお客も目を見開いていた。

 そして、コーヒーを飲みながらゆっくりとくつろいでいると、すっかり夜になっていたというわけだ。


 俺の前を手を大きく横に広げながら歩く奏。

 心地よく吹く風が、奏のスカートを少しなびかせる。


「場所によってはだけどな」


「ここは通路から少し外れてるからかな~?」


「外れてるって言っても、真横に人がこれでもかと歩いてるぞ」


「そうだけど~、あっちよりここの方が人は少ないよ~」


「カップルの量は凄まじいけどな」


 ライトアップされた通りのすぐ横にある通路には、自撮りをするカップルがこれでもかと溢れていた。俺達もその1組に過ぎないが。


「写真も撮ったし、ちょっと座る?」


「そうするか」


 歩きながら、どこか座れる場所を探していると、


「あ、ちょうどそこにいいのが!」


 と、奏は運よく空いていたベンチに駆け寄る。


「零二くん~!早く~」


 腰掛けると、手を振ってくる。


「今行くよ~」


 俺も、手を振り返しながらベンチへと向かう。


「こんないい場所にベンチあってよかったね~」


「タイミングもバッチしだったな」


「これが夢の国パワーってやつ?」


「かもしれないな」


 相づちを打ちながら、俺もベンチに座る。


「いい景色だね~」


「夜の方が幻想的だな」


「ライトアップされてるのが綺麗だよ~」


「そこらのイルミネーションより綺麗かもな」


「ね!」


 座って一望できるのはライトアップされているパーク内。

 運河には、船が何隻が浮かび、火山は光を当てられ存在感が際立っている。

 明かりが灯る街並みも、人の声を相俟って、繁華街に来ているように思わせる。


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