第55話 応援か?

「あ、てかもう俺達の番じゃん」


 奏を愛でていると、あっという間に俺達の順番が回って来ていた。


「え!ホント!」


 その言葉を聞くと、奏はパァっとした笑顔を向けてくる。


「ほら、もう次だよ」


「ホントだぁ~!やったね零二くん!」


「早いなやっぱ」


「この怖いのから抜け出せるよ~」


「俺はここからの方が全然怖いよ」


「大丈夫!私が付いてるから!」


 と、大きく胸を張る奏。


「まぁそうだな」


 さっきとは別人のように陽気になる姿を見て、俺はクスッと笑う。

 変わりようが凄いな。多重人格かってくらいの別人ぶり。


「怖いところの時には私には零二くんが付いてるし、絶叫系の時には私が付いてる!助け合いだよ!」


「乗り物乗ってる時にどうやって助けるんだ?」


「うーんと、横から「頑張って~!」って言うとか?」


「それただの応援じゃない?」


「だってこれくらいしかできないも~ん」


 でも、横から奏が応援してくれるなら、少しは気持ちは楽かもしれないな。


「零二くん!私たちの番が来たよ!」


 ちょんちょんと俺の袖を引っ張り、奏は前の方へ進む。

 キャストの指示に従い、座席へ座ると、安全バーを腰まで下ろす。


「ふぅ~、楽しくなってきたね~!」


「こうやって、バーと椅子の間に挟まってると緊張するよな」


「フレー!フレー!零二くん!頑張れ頑張れ零二くん!」


「それは応援か?」


「そう!さっき言ってたやつ!」


 両手を上げ下げしながら、エールを送ってくる奏。


「うーん、あんまし効果はないな」


「えぇ~!せっかくやったのに~」


「いや、抱きついてる方が効果は抜群だ」


「それはできないからな~、でも―――」


 言いかけると、奏は俺の手を握って、


「始まるまで、このくらいならできる!」


 じんわりと頬を染めながら、はにかむ。


「お、おう。ありがと」


「いえいえ~!零二くんを安心させるのは私の仕事だから!恋人として当然でしょ?」


「すげーありがたい」


 この安心感。多分、奏以外だったらないだろう。

 ずっと一緒に居るからだろうか、この何があっても大丈夫みたいに感じる。

 それとも、母性が凄いからか?甘え上手と言ってもいいかもしれない。

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