第49話 始まったよぉ~!

「…………ってそんな話をしてると」


 列は進み、ついに乗車口が見えてくる。


「ふぃふぇふぁ!ふぇふぃふんふぃふぇふぁ!」


 自分の視線に入ると、ポップコーンを食べながら、奏は体を上下に揺らしながら目をキラキラさせる。


「食べてから話そうな」


「んん……………ついに見えたよ零二くん!」


「俺は前から見えてるけどな」


「私の身長から見えるってことはもうすぐってことだよね」


「そうだな」


「やっと乗れるよ~!それに他のアトラクションとの時間もバッチし!」


「移動時間も含めたらホントちょうどいいな」


「やっぱ私天才かも?」


 と、ニットから溢れる胸を張る奏。

 どちらかというと天然だろ。そうツッコミたいが、今日の所はよしとしよう。

 意外に時間配分をしっかりできてて俺も驚きだ。


 俺と一緒に通学してなかったら学校は毎回遅刻なくせに。

 そうこうしていると、俺たちの番がくる。

 スタッフに誘導され、アトラクションに乗り込む俺達。


「ついに始まるんだね。私たちの夢の国へとスタートが!」


 安全バーを下ろしながらフンスと意気込む奏。


「ゲート入った瞬間から始まってるな?」


「それはそれだよ~、これはアトラクションのスタートだよ!」


「もう既にパークを一周するっているアトラクションは済んでるんだよな」


「あれは軽いお散歩~」


「あれがお散歩だったら、ここから家まで徒歩だな」


「楽しければいいんじゃない?」


「いや死ぬだろ」


 一日ここで遊んで疲れてるのに、そこから家まで歩きで帰るとか正気の沙汰じゃない。

 頭のネジが吹っ飛んでる人がやることだ。

 まぁ、俺がここでその案をOKすると奏はやりかねないが。


 荷物などを落ちないように準備をしていると、アナウンスが始まりアトラクションがスタートする。


「さぁ~始まりましたよ~!」


「他の人もいるんだからそんな大きい声出すなよ」


「分かってるて~」


 とは言ったものの、数秒後。的を撃つ時なんかは「ピュン、ピュンピュン」と言いながら撃ってるし、「零二くんそこ撃って!そこ!」などと絶叫していた。

 うるさいと思っていたが、アトラクションの音声にかき消されていて案外気にはならなかった。


 そして、終わると、


「いやぁ~、楽しかったね~。じゃ次に移動~!」


 感想をゆっくり話す暇もなく、パスを取ったアトラクションへと移動する。

 これ、今日一日体持つか、俺。


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