第26話 ―――シよ?

「んっ………許す」


 目を下に逸らしながら、ボソりと呟く。

 この嬉しさを隠しきれていない表情。可愛すぎる。


「さてと、何をしますかね」


 勢いで部屋に戻ってしまったが、どうしたものか。

 とりあえずゲームでもして時間を潰すか。いやでも、お風呂も入っていないし、そもそもこいつは着替えさえない。



 もしやこれって……………………






    ~~~~~~~~





「零二くんお風呂あがったよ~あと服も貸してくれてありがと~」


 彼シャツってやつですよね!この展開的に分かってましたけども。


 お風呂上がりの奏は、俺の白いTシャツを着てピースをしながらポーズを決めてくる。


 ダボダボのシャツでも分かる、豊満な胸。そして濡れた髪が色気を出している。

 ふんわりと香る石鹸の匂いと、スベスベの太もも。男を殺しにかかってるだろこれ。

 しかも彼シャツというトドメまで刺してきている。


「隣失礼しま~す」


 と、ゲームをしている俺の横に座って、肩にもたれ掛かってくる。


「お、おう」


「零二くんはずっとゲームしてたの?」


「そうだけど、どうかしたか?」


「いや~?なんか難しそうなのしてるなーって」


「まぁ一人でするやつだしな」


「へぇ~、なんかすごいね」


「そうか?」


「私なんか細かい操作なんかしたら頭パンクしちゃう」


「スマブラで限界だもんな」


 肩にスリスリと頭を擦り付けながら会話をする。

 なんか猫みたいだな、奏。

 すぐくっついてくるというか、甘えてくる所も、小柄なところも、どこをとっても猫に似ている。


「クンクン――――――クンクンクンっ」


「どうした?」


 いきなり俺の匂いを嗅いでくる奏。

 何か気になる匂いでもするのか?ちゃんとお風呂も入ったし気にはならないとは思うが。


「いや~、今、私も零二くんと同じ匂いがするなーって」


 自分の着ているシャツと、俺のシャツを交互に嗅ぐ。


「そ、それはそうだろ………俺の服なんだから」


 彼シャツ着てるんだからそれはそうだろ。でも、面と向かって言われるとなんか恥ずかしい。

 こう同じ匂いを共有してるからか、奏から自分と同じ匂いをしてるからか、なんか興奮する。


「ねぇ零二くん」


「ん?次はなんだ?」


「零二くんの匂いに包まれてるとさ―――――」


 奏はもじもじと太ももを擦りながら、


「なんか変な気分になっちゃう//」


 俺の袖を引っ張り、火照った顔でそう言ってくる。


「おま、それって―――」


「――――――零二くん―――――シよ?」


 この瞬間、俺の理性は吹き飛んだ。

 速攻奏をベッドに連れていき、それはもう最高の夜を楽しんだ。


 だが、その翌朝。部屋の前に、『避妊は徹底しなさいね』というメモ書きとと共に、箱ごとゴムが置かれていたのは、人生で一番カオスだっただろう。

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