第19話 本当に見るのか?

「映画館久しぶりに来たぁ~」


「俺もなんかんだ久しぶりだな」


 40分後、俺達は最寄りの映画館に到着した。

 ここ最近、全く映画を見ていなかった。見たい映画がなかったというのもあったが、単純に行く人がいなかった。


 ぼっち映画はハードルが高すぎる。友達にでも遭遇したら死にたくなるだろう。

 確か最後に映画に来たのは、奏とだった気がする。アニメの劇場版を奏が見たいが為に見に行った。


「さて、零二くん。何を見る?」


 チケット販売機の上にあるモニターを見ながら、俺の袖をちょんと引っ張る。


「今の時間やってるのでいいんじゃないか?」


「それもそうだね」


 と、上映中の作品を見るが、


「…………………ホラーと女児系アニメしかないね」


「…………だな」


 ラインナップが終わっていた。

 女児系アニメは2人とも興味がないし、ホラーに関しては奏がビビりまくるからな。

 まぁ、怖がって顔を肩にうずくめてくるのを堪能するにはいいけど。


「今日は映画じゃなくて、どっかご飯食べて帰るか?」


 横にいる奏の顔を伺いながら言うが、


「零二くん、ホラー見よう」


 フンスと鼻を鳴らして、俺の顔を見てくる。


「マジで?」


「大真面目だよ私は」


「苦手だろ、お前」


「苦手だけどさぁ?零二くんとなら見れるよ」


「いつも画面から顔背けてるのに?」


「そ、そうだよ!なんか今日はちゃんと見れる気がする!」


「その自信はどこから…………」


「ここからだよ!」


 自分の主張の激しい胸叩いてさらに主張する。

 絶対に序盤から手で顔を覆い、中盤で顔をうずくめてきて、終盤は膝に顔があるだろう。

 もう既に未来が見える。


「とにかく、今日は零二くんと映画を見に来たんだから絶対に映画を見るの!」


 券売機の前に立ち、ピピっと操作を始める奏。


「ホントに見るのか?」


「見~る~の~」


「何がなんでも?」


「そ~う~!」


「まぁ俺は別にいいんだけど」


 ササっと操作をして、ホラー映画を選択すると、早速発券し始める。


「あ、お金」


「今日は私の奢りでいいから、その代わりポップコーン奢ってよ」


「あんま変わらんくないか?」


「いいの」


 財布を取り出そうとする俺に、画面を操作しながら言う。


「はい、零二くんの分」


 発券し終わると、チケットを渡してくる。

 そして、そのまま手を繋ぎ直すと、


「ポップコーン買いに行こ~!」


 と、ニコニコ笑顔でスキップし出した。

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