第9話 なに~?この四角い袋?


 頭を悩ませているところに、


「トイレ終わったぁ~」


 と、奏は部屋の中に入って来る。


「お、おかえり」


 冷や汗を垂らしながら、奏の様子を伺う俺。


「零二くんもトイレ行ってくれば~?」


「いや、俺は大丈夫」


「そ~?ならいいんだけど~」


 のほほんとした声色で布団の上にちょこんと座る。

 そして、寝ぼけながら、俺の部屋をおもむろに見渡す。


「ど、どうかしたのか?」


「ん~?いや~、零二くんの部屋だな~って」


「それはそうだろ」


「だってお泊りしてるもんね~、えへへ」


 ポケーっとした笑みを浮かべる。その刹那、奏は枕元に視線が行く。


「何~、この四角い袋~?」


 モノを発見すると、手に取り顔に近づける。


「ん~?ゴミ~?違うなぁ~、中に何か入ってる~」


 グニグニと袋を触る奏。雰囲気がエロい。パジャマ姿で尚且つおっとりとした目でゴムを触る美少女。

 その姿がエロくないわけがない。


「零二くん~、これなに~?」


 ゴムをこちらに向けてくると、首を傾げてくる。

 眠気と無知が合わって出来るその表情。完全に男の理性を殺しにかかっている。


「ん~?俺も分からないなー」


 とりあえずこれで乗り切ってみる。多分無理だろうけど。


「でも~、零二くんの部屋にあるってことは零二くんのだよね?」


「俺の友達が置いて帰ったかもしれないな」


「そうなの~?」


「俺も知らないから、今度友達に聞いてみたらいいんじゃないか?」


「う~ん、なんか怪しいな~」


 奏はゴムを片手に四つん這いで俺の方に近づいてくる。


「ど、どうした?」


「なんか嘘を付いてる匂いがする」


 クンクンと匂いを嗅いでくる奏に、


「お前はイヌか」


「あうっ―――――」


 軽く頭にチョップする。

 嘘を付いてる匂いってどんなだよ。今日、お風呂上りに念の為に香水を付けておいたから、良い匂いがするのならまだしも。


「零二くん~、正直に言ってみて?」


 ゴムを口にくわえ、両手で俺の頬を掴む奏。


 そのあざとく誘っている仕草に、俺の顔は一気に赤くなる。


 けしからん!少し開いている胸元にゴムを口にくわえるとかあざとい以外の何者でもない。


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