セリア、大好きですわ!
——清々しい朝だわ、風が気持ちいいわ。
わたしは窓を開け、涼しい風にあたって、いろいろなことを思う。
わたしは、とうとう7歳になった。なってしまった……。
2年あまり、わたしは悪目立ちしないように努力に努力を重ねてきた。
だがしかし、
お勉強は、アルストール家の全ての本を制覇してしまいましたわ……。
剣のお稽古は、とうとうパワード先生を超えてしまいましたわ……。
魔法のお稽古は、魔力コントロールの鍛錬が一番魔力向上に効果があるとは知りませんでしたわ……。
そして、とうとう残念公爵令嬢が出来上がってしまったのですわ!
せめてもの救いは、近しい間柄の人たちにしか知られていないことでしょうか……。
いろいろと考えごとをしていると、トントンとノックの音が聞こえた。
「メリアお嬢様。朝食のお時間です」
「はい、わかりましたわ。すぐにまいります」
セリアが呼び出しに来てくれたようだ。
わたしはすぐに食堂へ向かう。
すでに、お父さまとお母さまが席についていた。
「おはようございます。お父さま、お母さま」
「おはよう、いとしのメリア。それとお誕生日おめでとう」
お父さまからお誕生日のお祝いの言葉をもらった。
お父さまは嬉しすぎて泣きじゃくっている。
——相変わらずですわ。
「メリア、お誕生日おめでとう。今日はお披露目会がありますからね」
「はい、お母さま」
そう、わたしの誕生日がメリア・アルストールとしてのお披露目会の日である。
一つ残念なことがある。
それは、セシルがまだ7歳をむかえていないため招待できなかったのだ。
王女様だから招待できるかどうかはわからないのですけれど……。
朝食を終えると、わたしは部屋に戻る。
セリアたち使用人が待っていてくれて、お披露目会のために用意されたドレスにお着替えをする。
ドレスは白と淡いピンクが織り交ぜられた素敵な衣装だ。
わたしの金色の髪によく似合うようにデザインされている。
オーダーメイドだ。
わたしは鏡越しに自分を見て呟く。
「わぁ、お姫様みたい」
セリアは「うふふ」と優しい笑顔で返してくれた。
「メリアお嬢様は、アルストール公爵家のお姫様でございますよ」
——そうでしたわね。
準備が整うと、お母さまがわたしの部屋に入ってきた。
「まぁ、メリア。とても可愛らしいわ。天使みたいですわ」
お母さまがお父さまみたいなことを言ってきた。
「ありがとうございます、お母さま」
「そろそろお披露目会が始まるので一緒に参りましょう」
わたしは、お母さまに手を引かれお披露目会場へ向かう。
会場に入るとたくさんの貴族たちが会場を埋め尽くしていた。
部屋の上座には、お披露目台が用意されている。
わたしがお披露目台に上がりかけると、会場中から歓声が湧き上がった。
たくさんの方たちに注目されておりますわ……。
お父さまとお母さまと一緒にお披露目台に上がる。
すると、皆様に向けて挨拶が始まる。
お父さまが一歩前へ出ると会場が一気に静かになり、お父さまに注目する。
「皆様、本日はアルストール家にお越しいただき誠にありがとうございます。我が娘のメリア・アストールをご紹介いたします」
お父さまが「メリア、前へ」と小声で呟かれ、わたしは前へ出る。
「皆様方、お初にお目にかかります。わたくしは、ブルセージ・アルストールの娘、メリア・アストールでございます。今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます」
わたしは、スカートの裾を軽くあげて優雅に令嬢らしく挨拶をした。
会場中は拍手で鳴り響いた。
貴族の方たちは、わたしをとても歓迎しているみたいだ。
会場を見渡していると、エリック男爵とノエルの姿が目に映った。
顔見知りの姿が見えて少しホッとした。
わたしの紹介が終わると、怒涛の面会の嵐だった。
わたしの目の前に美味しそうなご馳走やデザート類がたくさん広がっている。
——主役は食べられないというのは非常に厳しいものね。
しばらくすると、エリック男爵家の方々の番になった。
ノエルも一緒だ。
「メリアお嬢様。本日は誠におめでとうございます」
「エリック様、ありがとうございます」
エリック男爵の挨拶が終わると、ノエルが前に出てきた。
「メリア様、本日のお披露目は素晴らしかったですわ。まるで天使が舞い降りてきたようでしたわ」
天使、天使って、みんなわたしを持ち上げ過ぎよ。
「ありがとう、ノエル。そうそう、あれから勉強の進み具合はどうかしら?」
「はい、メリア様のお陰で大変捗っておりますわ。貴族学校が楽しみでございます」
ノエルもちゃんと成長しているようで安心したわ。
まだまだ他の貴族たちも待っているので、この辺でお別れとなってしまった。
長い、とても長い挨拶が終わると、社交ダンスの披露になる。
3つくらい年上の男の子にエスコートされながら皆様の前でダンスを披露した。
ダンスが終わると、歓声と拍手で会場が鳴り響いた。
まだまだパーティーは続くらしいが、わたしたち子供はここでお開きになった。
わたしが自分の部屋へ戻ると、使用人たちが待機していてくれて普段着にお着替えをする。
しかし、この中にセリアはいなかった。
お着替えが終わると、
セリアがワゴンでパーティーで出されていた食事を持ってきてくれた。
「セリア、ありがとう」
セリアは優しい笑顔で返してくれた。
「メリアお嬢様。大変素晴らしいお披露目会でしたわ。お腹を空かせていらっしゃると思いまして、食事を取り置いておきました」
長い時間、食事も取らずに貴族の挨拶対応をしていたのでもの凄くお腹を空かせていた。
セリアの心配りにはいつも感謝だわ。
セリアは、わたしが一人で食事をするのは寂しいだろうと、食べ終わるまでずっと側にいてくれた。
「セリア、大好きですわ!」
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