はじめての初級魔法が上級魔法級!?

 昼食を終えて、わたしは稽古場で魔法の先生を待っている。


 早く魔法を使ってみたくてドキドキ、ワクワクなのです。


 しばらくすると、お母さまがとんがり帽子を被った方と一緒に稽古場にやってきた。


 ——本当に魔法使いって感じだわ。


「メリア。こちらが、魔法の稽古をしてくださる先生です」


「メリアお嬢様、魔術師のミリア・エルフォードと申します。ミリアとお呼びください。よろしくお願いいたします」


「ミリア先生、メリア・アルストールです。こちらこそ、よろしくお願いいたします」


 お母さまが稽古場から離れると、早速魔法のお稽古になる。


「では、メリアお嬢様。魔法のご説明をいたします。基本は詠唱とイメージです。大地の精霊の力をお借りして魔法を発動させます。見本をお見せいたしますので、少々お下がりください」


 ミリア先生が見本を見せてくれるらしい。


 わたしは少し下がった位置でワクワクしながらミリア先生を見つめる。


『大地に眠る火の精霊よ我に火の力を与えたまえ、ファイヤーボール!』

 

 詠唱中に魔法陣が手のひらから浮き出てきて詠唱が終わると魔法陣越しに炎の塊が出てきた。


「ファイヤーボール」と唱えると目標物に向かって炎が飛んでいった。


 ——目の前で魔法が見られるなんて、本当に感激ですわ。


 わたしの目はキラキラ輝いていた。


「それでは、メリアお嬢様、詠唱をしながら炎のイメージを膨らませてください」


「はい、わかりました」


『大地に眠る火の精霊よ我に火の力を与えたまえ……』


 ——炎のイメージと。


 うーん。


 そうだガスコンロ! 


 炎のイメージが固まると手のひらか魔法陣と共に炎の塊が出てきた。

 

 ——うん? 炎が青くない?


『ファイヤーボール!』


 青い炎の塊が的代わりのデク人形に飛んでいくと爆発して激しく燃えてしまった。


 ——しまったぁ。マッチにしておけばよかった。


「メリアお嬢様、青い炎なんて初めて見ましたわ。何を想像されたのでしょうか?」


 ——言えない。

 

 ガスコンロをイメージしたなんて言えないでしょ。


 この世界にはガスで火をつける技術はまだないのよ。


「ロマンス小説を読んで寝た後に、夢で見た炎が青っぽかったからですわ」


「あらあら、メリアお嬢様は大人が読む本をお読みになるんですね」


 ミリア先生には、わたしは「おませさん」というイメージがついてしまったみたいだ。

 

「それはそうと、メリアお嬢様の魔力がかなり高いとお見受けられます。魔術師としての才能がございますわ」


 ミリア先生も他の先生と同じ目をしている。悪目立ちはしたくないのに……。 


 炎の色は誤魔化せたけど、魔力までは誤魔化せなかったみたい。


 魔力も「10倍」、しかもガスの炎をイメージしたので爆発力も上がっていたはず。


 ——ちゃんと自重できるように魔力のコントロールの練習をしなければ……。


「では、次は相手からの攻撃を防ぐ『ファイヤーウォール』をお見せいたしますね」


 ミリア先生が詠唱を始める。


『大地に眠る火の精霊よ我を守る火の力を与えたまえ、ファイヤーウォール!』


 ——おお、本当に炎の壁ができていますわ。


「基本的には弱い魔物などは通り抜けることはできません。相手の魔法攻撃も防ぐことが可能です。ですが、水系の魔法には弱いので注意が必要です」


 ——ふむふむ。火は水で消せてしまいますものね。


「では、メリアお嬢様。実践してみてくださいませ」


「はい、わかりました」


『大地に眠る火の精霊よ我を守る火の力を与えたまえ……』


 ——マッチの火よ。マッチの火をイメージするのよ。


『ファイヤーウォール!』


 ぶわっと炎の壁が勢いよく出現した。


 炎の色はミリア先生と同じだったけど、壁の大きさが凄まじかった。


「メリアお嬢様、素晴らしいですわ。何度見てもうっとりしてしまいますわ」


 ミリア先生のわたしを見る目が怖い。


 ——ミリア先生はきっと魔法にかんしてとても研究熱心な方なんだわ。


 そう思うことにしましょう……。


「でも、魔力のコントロールをうまくできるようにしないといけませんね」


 お、とても真っ当な意見がミリア先生から出てきた。


 ——そうそう、わたしには絶対的に必要なことなのよ。


「はい、わたくしもそう思っておりました。ミリア先生、よろしくお願いします」


「それでは、メリアお嬢様。私の両手をおとりください」


 わたしはミリア先生の両手をとる。


「では、私が魔力を強弱をつけて流しますので目を閉じて魔力の流れを感じ取ってください」


 わたしは目を閉じる。


 すると、ミリア先生からわたしに魔力が流れ込んできているのがわかった。


 強弱が分かりやすいようにゆっくりと変化をつけて送ってくれた。


「はい、目を開けてもよろしいですよ」


 わたしは目を開ける。


 ミリア先生の魔力の流れを感じることで魔力のコントロールはこんな感じなんだなぁと理解することができた。


 ただ、一朝一夕ではできないので日頃の鍛錬が必要になりそうだ。


「ミリア先生、ありがとうございました。なんとなく感じがつかめました」


「それはようございました。では、今日はこの辺んで魔法のお稽古は終わりますね」


 魔法の稽古もあっという間で、優雅にご挨拶をしてミリア先生を見送った。


 自分の手から炎が出せるなんて、ファンタジー世界って素晴らしいわ。


 ——まずは魔力のコントロールから練習しないといけませんわね。

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