第五話 「実戦」

「異能格闘技の実戦開始だ!」


「良いぜ! 来い! どんな攻撃でも受け止めてやる!」


「いや、そっちから来いよ」


(えぇ……今の結構カッコつけたつもりだったんだけどな……まぁいいや)


「分かったよ、だったら……! 本気で行くぜ!」


「おう、来い!」


 武蔵は間合いを詰めて、突きを打つ。 空手で言う逆突きの様な形で。

 気を込めた拳が、白灰の腹部に当たった。と思ったが、白灰の体は煙のように霧散する。

 ようにと言うより、本当に煙になって消えていった。


「あれ? 煙? もしかしてこれって、能力!?」


 白灰の出した煙が、武蔵の周りを囲んだ。

 

(まずいな……これじゃ何も見えない。この煙幕の中でどうやって戦えば良いんだ? あ、そうか。波道体! この風を上手く使えば、煙も撒き散らせるかも。なら、やってみるか!)


 武蔵は波道体を纏う。

 すると、そこから発生する風で周囲の煙は、一瞬にして消えていった。

 だが、


「まさか、煙幕の攻略法を一瞬で理解してしまうとは」

 

 背後から来る白灰の攻撃。

 これに対応するには遅すぎた。

 

「ぐっ……!」


 腕で防御するも、気で守りを固めるのに間に合わず、吹っ飛ばされる。

 立ち上がると、だいたい五メートル程飛ばされていた。

 

「まさか、こんな飛ばされるとは思わなかったな……」


「こっちも驚いたがな。まさか、こんな早く煙幕を攻略されるとは思わないじゃないか」


「なら、お互い様だな」

 

 再度、武蔵は白灰に打撃を与えようと動く。

 拳を握りしめて動こうとしたところで、思考を巡らせた。


(いや、ここで異能を使った方が良いんじゃねえか? これは空手と違う。打撃だけが全てじゃない。なら、火炎放射みたいに遠距離で攻める! それが最適!)


 武蔵は火を出し、それをどう操るかを考える。

 火を直線状に、遠くまで火をどう飛ばすか、白灰の位置と自分の位置からどうすれば火が届くか計算して、答えを導く。


 (これなら、いける!)


 手に気を溜めて、気の出量を高める。

 気を、極限まで溜める。

 

 武蔵の異常な気の高まりに、白灰は気付いていた。


(なんだ? 溜め技か? これ程の気の量。あいつは火を使うから、火炎放射みたいな遠距離攻撃かな。異能を使うのは初めてだって言うのに、いきなり凄い技を打ってくるね。そんな大技を披露してくれるんなら、こっちも大技使おうかな。練習として)


 白灰も莫大な気を放出する。

 

 武蔵の手から出た炎は、赤く燃え上がる光線と化す。

 直線状に放出される炎は、白灰に直撃した。

  

「……えっ?」


 当然、俺は焦った。

 なんせ、あんなバカでかい炎が直撃したんだ。

 無事で済む訳がない。

 そう思った。が、後ろから肩を叩かれる。


「やぁ!」


 振り返ってみると、そこには何の傷も受けていない白灰が、俺の反応を見て面白そうに笑っていた。


「なっ、ななっ、なんで無事なの!? さっき当たった様に見えたのは……」


「それは幻だよ。武蔵に幻を見せたんだ。まぁタネは教えないけど」


 幻……白灰はそう言い切った。

 だけど、僕にとってはそれが幻とは言い切れない程、リアルに見えた。

 

本当に火で燃えてる様に見えたのに、どうやったんだ......

 

「それにしても、能力使うと結構疲れるね。なんか体力が抜けていくみた…………」


 武蔵はそこで意識が途切れて、倒れ伏した。

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